高齢のお袋に謎の症状がでていて、いろいろと点検していると、やはり気になるのはサプリ。怪しいものは飲まないように気をつけてはいても、サプリは濃縮されてるので、思わぬ薬害が出ることがあります。とくにまじめな調査は宣伝もされないので、そのつもりで探さないとなかなか見つかりません。
このところ、この関連でまずみているのはもちろん厚労省の研究所である国立医薬基盤・健康・栄養研究所の、健康食品の安全性・有効情報。
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/indiv.html
ただ、健康食品でサーチしても、一般人がここをみるのはあまりなさそう。またその中身も羅列的で、わかりにくく、これでどれだけ、普通の高齢者が参考にできるものか。ただ、そういう情報のポータルとして一番あてになります。だけど、一般人に広報するつもりもなく、全くのお役所仕事。
他に、日本医師会が平成22年度から29年度までに集めた事例集、健康食品安全情報システム事業の成果報告というのがあります。たぶん、医師会がお金をもらって、健康食品安全情報システム委員会というので審議した内容と思いますが。これはおそらく医師が報告した事例が少なく(一般の医師には関連性に確信が持てるまで調べる余地もなさそうだし)、わずかしかありませんが、その中で、いくつか目をひくものがあります。医師向けで一般用じゃないので、なかなか見つかりませんでした。私のような医学系基礎研究者は医師会には入ってないので。ま、もらえばいいわけですが。
たとえば、うるさいくらい宣伝されてる、シジミ関連のサプリで、シジミ習慣、というのがあります。おそらく血栓を防ぐためにワーファリンを飲んでる56歳の人が、ワーファリンの効きが悪くなり血が固まりやすくなって増量が必要になり、なぜだろうと調べるとシジミ習慣が原因だったらしいということ。これはシジミ習慣のなかにビタミンKの一種が入っていて、何しろ、シジミの成分が猛烈に濃縮されていて高濃度に含まれるので、それをやめてもらったところ、元の安定した状態にもどったとのこと。
これは典型的なサプリの問題で、普通食事でとるよりも遙かに濃縮されてるので、人体実験のようなものです。食品由来ということで安全性検査もあまり長い期間はされないので、問題が出やすい。
サメ軟骨、グルコサミンでは、手足の浮腫、かゆみや肝臓機能障害、がいくつも報告されています。 これらの事例では、やめると直ってるので、ほぼそのせいでしょう。ただ、グルコサミンは有効なのは確かで、量とその他の成分でしょうね。サメ軟骨はやめた方が良いと思うけど。
コエンザイムQの被害は有名で、肝障害を起こしてます。これもやめたら治ってます。やはり、大量にとるので、肝臓が障害を受ける場合は多く、ほかにオルチニン、とあったけど、これはオルニチンの間違い、医師会が間違えるようでは。これで肝障害になった例もあります。ウコン、クルクミンはすっかり有名になってるのでいうまでもないところ。
意外なものでは、黒酢の濃縮粉末というのがありました。これは胃がおかしくなったようで、胃粘膜の病変になっていて明らかにクロスによる胃炎だとか。こんなの濃縮するなよと思いますが。
やめることで直った結果、特定できた例が多いですが、中にはあまりに多くをとっていたために、やめてもなおっておらず、どれが原因なのかわからない、だけど医師は疑ってるという例もあります。ある人は、ロイヤルゼリー、グルコサミン、ビタミンB類、穀物麹、ごま酢、桑の実、コエンザイムQ、カルシウム、ウナギ肝臓、ビタミン類、ととっていて、ともかく取り過ぎで、肝臓を痛めて肝不全になりました。これでは、元に戻れません。
珍しいものでは、indigo naturalis, といういかにも青そうな名前のものを主成分とする、青黛というものがあるそうです。昔から潰瘍性大腸炎の治療に漢方では使われていて、健康食品でもでてるとか。これは肺動脈性高血圧を引き起こすので、これは厚労省から注意喚起が出ています。ただ、この医師会の調査のでは、結腸炎を起こしてるらしい。これは回復されてないとか。
過剰のサプリは死亡率を上げるという報告が相次いで出ています。だけど効くサプリもあるのは確か。グルコサミンは関節内に分泌される細胞外マトリクスを増やすことで骨のスムーズな動きを確保するので痛みに効くようだし。だけど、基本的に、メーカーにとって、もっとも大事なことは売り上げなので、必要以上に多く摂らせがちです。
メーカーのいう一日あたりの量は、厳密な検討の結果決められる薬と違って、サプリの売り上げに都合のいい目安の場合が多い感じがします。効果があると感じる最小限にしたほうが無難。サプリなら、文字通り、足りないから飲むものなので、飲んですぐに効き目が出るはず。でないのなら、さっさとやめるべきです。とくに、注意書きを小さな字で難しく書いてあるサプリはやめたほうがいい。というのは、サプリに限らずどの商品でも同じですが。