市販のshRNAベクターではどうもsingle cell analysisに向かないし、そもそも効きも悪いので、いろいろと盛り込んで新しいベクターを作りました。これはなかなかのでき。単一細胞解析が容易で、複数個を同時にかなり良くつぶせます。かなりの数を調べないといけないことがあり2本鎖オリゴを一杯作ったのですが、問題は、これを組み込むところ。これらはどうしても立派なinverted repeatなので、配列によって絶対に入らないものが結構でてます。
たぶんこれは細胞がそういう配列を嫌ってる訳なので、 これはコンピテントセルの遺伝型を変えるしかない、と、どういうのが売られてるかを調べたところ、まず、SURE2、Stabl3は既にうちにあって、これらは効果なし。また、recAを含めて余計な遺伝子を削ってあるMDS42ΔrecAという、合成genomicsで作られた大腸菌も、ずっと以前、試しましたが、そもそも普通のベクターのtransformationで欠損を持つ妙なものが取れてくるという情けなさで、これは試すまでも無し。
他を調べると、NEBのStable Competent E. coliというのが、stbl3との比較もあってよさげ。そのほかに、SigmaからSteadyというコンピと、他の会社から、Enduraというコンピが売られてました。この2つ、stbl3に代わる、とあるけど、そのデータは示されておらず、?と思ってよく見ると、なんとこれはStble3と同じgenotype。サイトをよく読むとそのように書いてありましたが、勘違いしやすい。これが狙いか。Stble3は、これまで試した中でよかったという印象がありません。SURE2は確かに良い場合がありましたが。
genotypeは、以下の通りです。上の3つは全く同じ。Enduraは要するに安い、というのが売りらしい。Sigmaは6万もするし?
Endura
recA13 supE44 ara-14 galK2 lacY1 proA2 rpsL20(StrR) xyl-5 λ– leu mtl-1 F– mcrB mrr hsdS20(rB–, mB–)
Sigma Steady
recA13 supE44 ara-14 galK2 lacY1 proA2 rpsL20(StrR) xyl-5 λ– leu mtl-1 F– mcrB mrr hsdS20(rB–, mB–) -
Stbl3
F– mcrB mrr hsdS20 (rB–, mB–) recA13 supE44 ara-14 galK2 lacY1 proA2 rpsL20 (StrR ) xyl-5 λ– leu mtl-1
NEB Stable
F' proA+B+ lacIq ∆(lacZ)M15 zzf::Tn10 (TetR) ∆(ara-leu) 7697 araD139 fhuA ∆lacX74 galK16 galE15 e14- Φ80dlacZ∆M15 recA1 relA1 endA1 nupG rpsL (StrR) rph spoT1 ∆(mrr-hsdRMS-mcrBC)
Sure2
SURE 2 株:e14– (McrA–)△(mcrCB-hsdSMR-mrr)171 endA1 supE44 thi-1 gyrA96 relA1 lac recB recJ sbcC umuC::Tn5 (Kanr) uvrC [F'proAB lacIqZ△M15 Tn10 (Tetr) Amy Camr]
他にみつけたAirBrownのTransforMax™ EPI300
F- mcrA Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC) φ80dlacZΔM15 ΔlacX74 recA1 endA1 araD139 Δ(ara, leu)7697 galU galK λ- rpsL nupG trfA
比較のために
XLIBlue
recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 supE44 relA1 lac [F’proAB laclqZΔM15 Tn10 (Tetr)]
NEBのはSURE2と似てるけど、recB,recJではなくrecA1?なんだかレトロで、これで?という気はするけど、NEBだから、データを信じて、実感ではStbl3~SURE2なので、Stble3よりも良いのならば、試してみる価値はあるか、というところで、早速購入して使ったところ、これまでどのコンピでも全く生えなかった2本鎖オリゴを入れたものが、良い感じで沢山生えてます。さて配列チェック、どうなるか。
>>結果、効率は高いですが、妙な欠落がありました。やはり不安定な感じで、これでふやすのは危なそう。一応、一つは取れましたが、いつものコンピに入れ直して増やしました。 ボツ・・ やはりSURE2か。
ずっとあとの後記
Stbl4というエレポ用のコンピが出ていたのでケミカル用に作り直して使ってみました。これは
mcrA Δ(mcrBC-hsdRMS-mrr) recA1 endA1 gyrA96 gal-thi-1 supE44 λ-relA1 Δ(lac-proAB)/F' proAB+lacIqZΔM15 Tn10 (TetR)
Stbl3よりは、SURE2と似てるのかなあ。同じではないですが。SURE2はKanプレートでは使えないので、そういうときに使ってますが、メーカーが言うように、確かにこのコンピは、他のでは増えてくれないでかいインサートを持つプラスミドを増やしてくれました。ありがたい。
ついでに、他のgenotype、S-Sを作らせることが可能といってるけど、あんまりそんなデータは見たことないのだがと思いつつも、RosettaGamiBは以下の通り。
F– ompT hsdSB (rB– mB–) gal dcm lacY1 ahpC (DE3) gor522::Tn10 trxB pRARE (CamR, KanR, TetR)
レアコドンの補充があってよかったという思いをしたことはないですが。
>>ここを見る人が多いので、さらに補足
よくわからないのがAmy。多くのCompeで追加されていて、たとえばその昔一世を風靡したXL1-BlueはXL2-Blue、XL10Goldとなり、ひきつがれてますが、この1が2になったのはAmyCamRmつまり、amylaseの追加。ただこれはtransformation efficiencyを上げるためとの説明です。菌の細胞壁を脆くするとか?同じように良く使っているSURE2もSUREにAmyCmRを追加したもののように、遺伝子型だけを見ると見えます。ただ、これはTraD36、episomeの転移に関わる遺伝子周りも変わってるのかもしれません。どのコンピがいいのかは、使ってみないとわからないというのが正直なところです。
>>ついでにメモ
BL21-CodonPlus-RIL 菌株a: E. coli B
大腸菌であまり使われないArgのためにAGA/AGGを発現するargUと、あとAUA, CUA を補填するようにileY、leuW とい3つのtRNA 遺伝子を入れた汎用菌株で、IPTGによる発現誘導ができる。ただこれらは落ちやすいのでコンピを作るにはクロラムフェニコールでselectionして取り直した方が良い。
F– ompT hsdS(rB– mB–) dcm+ Tetr gal endA Hte [argU ileY leuW Camr]*