このところ、床に入るのが楽しみでした。この本のおかげ。以前から目をつけておいた本で、ネットで買って、裁断してInkPadに入れて、ちびりちびり毎晩読んでました。読み終えた今、ペンギンロスで眠れなくなってしまった・・
ペンギンを部屋に飼ってる売れない作家、ただ、彼は死亡記事のストックを作っておくという新しい仕事で収入を得ている。こういう状況設定だけで、たぶん、ひとりでに物語が動き出したのかな。妙に現実感があり、寝る前に読んでるもので、物語と夢との境が曖昧になってました。最後の数十ページ、ペンギンが病気になってしまって以降は、読むのをやめることもできず、おかげでその日は夜明けを見ることに。
クルコフという、キエフ、ウクライナの作家です。この妙な現実感、おそらく次の画面に映るときに、普通なら段落を切り、スペースを空けるのに、この作品では、段落の間をおかずに説明も無しに全然違う場面に切り替わっていることによるのかな。まるで日常のように切れ目がない。独特です。現実がぐいぐい日常に入り込んできます。ほとんど、ペンギンが部屋の中にいるような日々でした。
それほどうまい文章でも見事な表現とも思えないのだけど、少々謎なストーリーに引きこまれます。やはりペンギンのミーシャは死んでしまったと見るべきなのでしょうが、その喪失感は半端ありません。もしかすると、ウクライナの作家の本を読んだのは、長い読書歴の中ではじめてかもしれない。ロシア文学としてイメージするものとはちょっと違いますが、アネクドートっぽいところもあり、なんとなくロシアの民話のトーンも備えた、物語を語る喜びに溢れた作品でした。
なんとも、終わってしまったのが残念。