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2017年4月23日日曜日

ChainLPで2段組本を2ページ分離表示

そういう訳で「家の馬鹿息子1」が早くも到着。実に700ページを超える大著です。長らく絶版で、高値がついてますが、全4冊のうち、1だけが1800円程度で出ていて、迷わず購入。2-4は1万近くします。サルトルの本を中古で買うと、最初の2ー3ページくらいに(だけ)書き込みがあるものですが、これはほぼ新品の状態でした。さすがにかなり古びてはいますが、スキャンするので、全く問題なし。いったい、この本はどこにあったのだろう?ともかく、早速ScanSnapしましたが(半分に分割しないと裁断すらできなかったというのはともかく)、人文書院の彼の他の本と同様、これも2段組。老眼にはなかなか厳しい。

こういうとき、8インチ弱のaura oneでなく、新しく出るソニーの13インチのリーダーが脳裏を横切りますが、今では2段組の本はあまりないので(ハヤカワミステリといくつかの全集本くらいか)、そのために買うのもばからしい。

2段組を上下に分けることができれば、aura oneなり auraH2Oを横にして読めばいいだけで、実際、数年前に、一冊だけ、ハヤカワミステリをそうやって自炊したことがあったのでできるはず。どうやったのか、その設定を記録してなかったので、今回、再び、2段組の1ページを2ページに分割表示するように設定を試行錯誤。結局、2つの設定だけでした。「回転」を時計回りに、「縦横比」をチェックを入れて「半分個」に。普通は余白をぎりぎりまで削るために入れるトリミングの設定は、はずしたほうが、中央にズレすぎるのを防ぐことができるので0のまま。逆にそのサイズ設定を毎回する必要もないし。またページ補正を単純横優先にするのもポイント。

今度は、この設定を保存しておきました。これだけでどんな小さな2段組も楽に読めるようになりました。もっともページめくりがやたら頻繁、文字がでかすぎ、というのは当たり前にしても、ともかく読みやすくなります。

このChainLP、これがあるから自炊ができているわけですが、なんて優れたソフトなんだろうと改めて感心。この設定では、1ページが2ページになるわけですが、この設定にすると自動的に1、2の選択タブが↓のようにパネルの下に出て、分割して2ページに表示できます。


このソフトを作ってくれた人には、ただただ感謝。完成度が高く、便利で、Windows10になっても安定です。日本語ができないとこれが使えず、あとはCalibreくらいしかないので、自炊の範囲が限られるでしょう。有料のはあるようですが。だから海外では、自炊はあまり聞いたことがなく、電子本が少なくとも日本よりは売れてるのかな。だけど、電子本は、ただ本をスキャンしただけのもあり、解像度も低いのでAmazonのレビューを見ると、細かい部分が見れないと怒りのコメントも珍しくありません。技術自体はそんなに難しいはずもないのに。

5年経っての追記
この記事、今でも多くの方が検索してみられてますので、最近気がついたことを一つ。上のやり方でやると、ページの分け位置がずれて、片方のページの上か下が切れてしまうことがあります。中心がずれてるわけですが、この場合、ChainLPのトリミングでもやった限りでは解決できませんでした。
 仕方ないのでこの場合は、ACROBAT等のpdfの編集ができるソフトでまず文字領域だけを表示するようトリミングをして、これを保存の時に画像のみを連番の.pngファイルとして保存し、zipに圧縮します。次にこのフォルダをChainLPで開くときに、dirとして開くと、トリムさせた画像の部分だけが100%として表示されるので、これを上の方法で2つにわければ均等に分けることができて、奇数と偶数ページでどちらかが切れることが解消されます。
 もちろん、このときに適当に余白を上下均等に入れれば、文字がでかすぎる感も減らせますが、老眼的には特に問題ないかな。見栄張っても仕方ないし。
 
さらに時が経ち2023年の追記
いまだに多くの方が毎日来られてるのは、やはり自炊で電子リーダーのサイズが小さいということですね。koboさんでなくてもいいのだけど、どこか9インチのを出してくれればいいのだけど。 ともかく、この2段本のやり方はずれる場合の対処をこの前の追記に書きましたが、これはめんどくさい。こんなことしなくてもChainLPの設定でこれに対応できることに気がつきました。それは編集>トリミングを開いて、出てきたこのパネル、
これの右上の事後トリミングの中の左側(か右側)の数字と、下の余白の、事後トリミングと反対側の数字を設定すること。これで、2段の範囲が設定できるようです。それから、詳細設定>画像で1bitにしたほうが、サイズが半分になるし、読みやすく、見栄えも良くなるみたいです。2bitで今までやってきましたが、単にストレージを無駄に使ってました。全部入れ直し中という・・・ それにしても、改めて、このソフトのものすごさには感動します。 


2017年4月15日土曜日

騎士団長

随分時間をかけて騎士団長を読み終えました。おいしい料理はなくなるまでゆっくり食べたいもの、特に物語は終わるのが惜しくて、できるだけ引き延ばすのは、子どもの頃からの習慣。

子どもの頃、家があんまり豊かでなかったのかどうか、そんなに困ってた覚えもないけど(子どもにはわからない)、いつも本に飢えてました。でもたぶん、それは自分でいわなかったせい。どうも、そんな子どもだったようです。友達が持っていた物語の全集(何だったんだろう、あれは)をなによりうらやましく思ってました。その家では、大事に棚の中にしまって、貸してくれませんでした。ちょっとだけ見せてもらって、ページをめくったときのわくわく感、本棚に戻したときの悲しさはなんだか、妙に残りました。

彼の作品は大抵読んでますが、この物語、際だって面白かった。カテゴリー的には、世界の終わり、と同列なのかもしれませんが、内容としては格段と上。ノルウェイの森を思い出します。

本を読むのは寝る前しか時間がないわけですが、毎晩、騎士団長が出てくるのを楽しみにしてました。それも終わってしまった・・

人生のある時期に、ふと気がついたら騎士団長が椅子の上に座っている、そんなときはやってきます。いつもと変わらなく続くような日常の中でも、ある日、気がついたら、イデアと向き合い、メタファーの黄泉国を彷徨う、そんな、時間がかならず訪れます。

でもそれは、顔無しを見かけることもなく、2重メタファーへと流れる川にも、そもそもそんなものが流れていることすら気がつかない、そんな人生よりはずっといいのかもしれません。まりえの影を追って、その世界の裂け目に入り込むことで、我々はこの世界のことをもっと深く理解できる、のかもしれません。

彼の最高傑作。全く期待してなかっただけに、素晴らしい物語の力。

さて、次に何読むか・・ クルコフ?

2017年4月9日日曜日

DFP

学生時代、タンパク分解酵素の研究が最初の研究テーマだったので、その阻害剤のDFPという試薬を使うことになりしばらく実験してました。ある日、ベンチに顔を出した教授にどういう実験してるのときかれて、DFPですというと、ぞっとするような話を聞かされました。彼の友達(だったのか、その研究室員だったのか)がDFPを使って実験をしていたところ、その人が周りの人に、なんでこんなに暗いところにいるの、灯りつけようやと言い出したとか。昼間、普通に明るい研究室の中で。DFPを吸ってしまったらしく、視神経がやられてたという話でした。神経伝達の際に出るアセチルコリンの再利用を行う酵素アセチルコリンエステラーゼ(血液検査項目にも出てきます)と、当時やってたタンパク分解酵素は親戚で、DFPで反応できなくなります。タンパク分解酵素が少々つぶれてもあまり即死になることはないでしょうが、アセチルコリンエステラーゼは神経伝達が止まるのでやばい。

今なら研究室でそんなことしてたら大騒ぎです。揮発性の高い試薬なので、もちろん当時もドラフトチャンバーの中でしかその試薬は使いませんでしたが、そこまで危ないとは知らなかった。水に出会うとすぐに壊れるので、体内に入ったらすぐにつぶれるのかと思ってましたが、ぞっとしました。、もっとも、それがほんとの話なのか、あるいは教授が気をつけるようにと少々脚色して聞かせてくれたのか、いまとなってはわかりませんが。このDFPの構造を真ん中で2つに分けたら、サリンになります。サリンの方が小さい分、体内への浸透性も高いでしょう。

サリンを使ったオウム真理教のテロのとき、そういうこともあってニュースを聞いて、その危険性は肌身に感じました。実験室で使う量は、ごく微量、実際に加えるのはほんの数マイクロリットルですが、封印されてたガラスバイアルには1ccくらい入っています。普通のベンチで開けるのはもちろん厳禁。防毒マスクが必須です。そんなのが床の上にこぼれてたら、息を止めて全力で逃げ出さないといけません。

シリアの、たぶんサリンと言われている化学兵器の攻撃、それを浴びた子どもたちの映像をみて、そんな話を思い出しました。だから水をかけるのは正しい、でも、作用はほとんど数分で完了しています。失われた神経は元に戻りません。正視できるものではありませんでした。

これを受けたトランプ大統領の派手なミサイルの発射。支持率が低迷しているので、たぶん、やるだろうと思いましたが、ただ、プーチンと仲良しだったのはどうなったのだろう。そもそも、ロシアとシリアの関係、あまりわかりやすいものではありません。ロシアの後ろ盾さえなければ、現政権の暴挙は、あるいは存続自体もできないのではと、素人は思いますが。サリンへのお返しだけだと言っても、それで亡くなった兵士もいます。家族は許さないし。反アサド政権派の支援というより他国が自国に侵略したとみます。オバマさんが攻撃を行わなかったのはそのあとでアフガン、ベトナム化になるのを懸念してのことでした。他国に攻撃するのは、とても難しい。

ロシアが反政府派の拠点を攻撃したとのこと。やむことのない報復の繰り返しです。