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2017年4月15日土曜日

騎士団長

随分時間をかけて騎士団長を読み終えました。おいしい料理はなくなるまでゆっくり食べたいもの、特に物語は終わるのが惜しくて、できるだけ引き延ばすのは、子どもの頃からの習慣。

子どもの頃、家があんまり豊かでなかったのかどうか、そんなに困ってた覚えもないけど(子どもにはわからない)、いつも本に飢えてました。でもたぶん、それは自分でいわなかったせい。どうも、そんな子どもだったようです。友達が持っていた物語の全集(何だったんだろう、あれは)をなによりうらやましく思ってました。その家では、大事に棚の中にしまって、貸してくれませんでした。ちょっとだけ見せてもらって、ページをめくったときのわくわく感、本棚に戻したときの悲しさはなんだか、妙に残りました。

彼の作品は大抵読んでますが、この物語、際だって面白かった。カテゴリー的には、世界の終わり、と同列なのかもしれませんが、内容としては格段と上。ノルウェイの森を思い出します。

本を読むのは寝る前しか時間がないわけですが、毎晩、騎士団長が出てくるのを楽しみにしてました。それも終わってしまった・・

人生のある時期に、ふと気がついたら騎士団長が椅子の上に座っている、そんなときはやってきます。いつもと変わらなく続くような日常の中でも、ある日、気がついたら、イデアと向き合い、メタファーの黄泉国を彷徨う、そんな、時間がかならず訪れます。

でもそれは、顔無しを見かけることもなく、2重メタファーへと流れる川にも、そもそもそんなものが流れていることすら気がつかない、そんな人生よりはずっといいのかもしれません。まりえの影を追って、その世界の裂け目に入り込むことで、我々はこの世界のことをもっと深く理解できる、のかもしれません。

彼の最高傑作。全く期待してなかっただけに、素晴らしい物語の力。

さて、次に何読むか・・ クルコフ?