ギアを掛け違えて、眠れない夜ふけ。うっかり、村上春樹のアンダーグランドを開いてしまい、目が余計にさえそうになって、あわててこちらに。開くべきは、やはりディラン・トマス。修復。
「 これは冬の物語であるーーー 」
有名なこの出だし。時季外れだが、異様に寒くなった今日には悪くない。
「 雪で何も見えぬ黄昏が 盃のような谷間の農場から
湖と浮かぶ野原の上を渡ってゆく、
手につつまれた雪片を抜けて風も立てずに滑りながら、
ひそやかに流れる牛の白い息、」
松田幸雄氏のみごとな翻訳によるディラン・トマス全詩集-しかもこれには丁寧な「訳注」、すべての詩についての説明がついていて-本をばらす踏ん切りがなかなかつかず、aura oneにいれたのはつい最近。読みたいときに読むことができることが何よりも貴重。
なんという豊穣。ウェールズに立ち、この世の輝きを謳い続けた、ウェールズの詩人は、どんなときにでも、不思議なくらいにそのことに立ち返らせてくれます。
後期の「脚長の餌の唄」から、終章
「さよなら、幸せに、と太陽と月が
陸で途方に暮れる漁師に 光を投げた。
男は自分の脚長の心臓を手ににぎり
家の戸口に独り立っている。」
違うか・・・ メスだし。