紫外線が強い季節になりました。そんな頃にタイムリーな、この論文、
Effect of Sunscreen Application Under Maximal Use Conditions on Plasma Concentration of Sunscreen Active Ingredients
前から気になっていましたが、最近では日焼け止めを積極的に塗ることが推奨されています。オゾン層が薄くなったせいなのか、紫外線は昔よりは強くなりました。だけど、日焼け止めをメーカーの推奨のように塗ると、相当な量になります。日焼け止めには相当いろんな成分が入っていますが、そんなに安全なものなのかなと思って、つけたことはありません。が、女房はまじめに塗ってます。いいのかなと気になってはいても、たいした根拠もないし、塗らないとシミが増えるとか皮膚ガンになってもいいのね、とか絡まれても困るし。
この論文では一般的な日焼け止めの成分であるavobenzoneを例にして、どれくらい血中に取り込まれるかを調べてます。これは血中濃度が0.5ng/mLよりも低ければ生物学的影響はないとFDAはしていますが、言い換えれば、それ以上だと、発がん性や催奇性などの毒性検査が必要になるとされています。24人で調べたところ、血中での最高値が4ng/mLで、安全とされるレベルを一桁超えてます。
avobenzoneは紫外線を吸収して分解されることで、皮膚が紫外線に曝されることを防ぎます。だけど、同時に、構造からわかるように、皮膚に浸透して細胞内に入り、血中まで容易に到達するでしょう。この手の紫外線吸収剤はどれも似た性質があるようで、Oxybenzoneはもちろんですが、OctinoxateやHomosalateも、名前からなかなかぴんときませんが、構造を見ると同じような浸透性を持つだろうことくらいは、化学者ではない私でもわかります。
たぶん、紫外線吸収剤は芳香環を使うのが簡単なので、水に溶けにくく油に溶けやすい化合物が使われているのでしょう。いずれも、もちろんそんなに毒性が高いものではないですが、日焼け止めクリームで使う量は大量です。飲み薬は厳しく摂取量が管理されてますが、塗り薬はほぼ放置されてます。紫外線吸収剤は取り込まれるとどれくらいの早さで代謝されて放出されるものなのか。だけど、その前には血中に入って全身を回って肝臓に入らねばなりません。
おそらく紫外線散乱剤である二酸化チタンや酸化亜鉛のナノパーティクルの方がまだ安全でしょう。これらナノパーティクルの安全性がどうかわからないとは言われていますが、ただ、これらが蓄積することはあんまりないかな?少なくとも上に書いた吸収剤よりは体内吸収がかなり低そう。
皮膚ガンのリスクか、日焼け止め薬の毒性か、どちらを取るか。一番安全なのは中東のように布をかぶることだとは思います。宗教は人が生きるための知恵でした。