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2017年10月13日金曜日

Sephadex

Sephadexはたぶん最初に学んだ実験素材。デキストランの架橋体で、スウェーデンの優れた高分子化学の研究から産まれたと聞きました。生化学では欠かせない素材です。今でも、分子生物学の実験で良く使ってます。あまり一般的な使用目的ではないとは思いますが、これを使うとクローニングが良くできます。

今回、ちょっと違ったイメージングの目的で、なかなか使えそうな素材が見つからなかったとき、ふとこれが使えるかもと思ってやってみると、これが正解でした。生化学の正しい使い方をしていたときは考えたこともなかったですが、これを顕微鏡で使ってみると、きれいな形をしています。ならばと、走査型電子顕微鏡でみてみると、こんな感じ。これは300倍、かわいらしい形で、G-50という良く使うタイプ。fineというサイズ、大体、20-80umとありますが、ほんとにそれくらい。

なかなかきれいです。1300倍ではその均質な網目が見えてます。

 この網の中をタンパクやDNAが入って、大きさによって移動する速さが異なることで大きいのと小さいのを分離できます。網目を3万倍で見たのがこちら。


 この襞の厚みは大体、200nmくらいでしょうか。分離できる分子量は30000以下、とされるので、2nmあたりがこの隙間を通れる限界ということでしょうか。ただ、この撮影、水を吸ってない状態で見てるので、水につけると数倍でかくなります。デキストリンの化学反応だけでよくこんなものができるものです。

これを開発したのはPhrmacia、懐かしい名前です。その後、GEバイオサイエンスに吸収されました。いまでは試薬の最大手のシグマからも買えます。このG-50はGEからので、シグマから買ったG-100があったので見てみると、

G-50よりも目が粗いのがよくわかります。これはfineなどのサイズ分類が書いて無くて、ビーズの不均一さが目立ちます。実際、3万倍では、
 こんな感じ。編み目が随分粗いのは分画できる分子量が球状蛋白で15万以下と、G-50より大きいので、道理。でも15万のタンパクでも4nmくらいとすると、この隙間、遙かに大きく、G-50とは随分違う印象。このゴミのようなのは何でしょう。これも隙間を埋めるのに働いているのか、それとも単に合成の品質の問題なのか。もっとも水が入るとG-50よりもふくれるので、実際にゲル濾過で使うときにはどうなのかわかりませんが。ひょっとして、壁がふくらみ、隙間が埋まるのでしょうか。また表面の襞の密度も場所によってかなりムラがあります。この写真では、中央は密だけど、周辺は粗になってます。なんとなく、合成の品質が落ちるような印象。どこかにOEMさせて作ったものなのかな。

ともかく、こんなのを合成できるほど優れた技術を持ってた会社がなくなってしまったのは寂しい限り。それにしても水を入れたらどうなるのか見たいものです。だけどそれは意外と難しい。

2017年10月12日木曜日

PDF-XChange Editor

pdfを読んで、ハイライトつけたり書き込んだりするのには、フリーのreader、PDFXChange Viewerを使ってきました。とっても優れものです。ただ、さすがにページの編集、ファイルを入れたりOCRしたりはできないので、そこだけAcrobatにしてきました。現在、Acrobat XIのですが、アドビの、5年間しかサポートしない方針のために、今週末でこちらはサポート終了。このために、Abobeは新しいのを買えと、うるさく言ってきてます。だけど、新規のは年間か月々のサブスクリプションのタイプしかなくて、これはなんと、一番安いので毎月1380円、つまり2年で33120円、OCRできるProはその大体一割増し。読む以外の作業は滅多にするものじゃないのに。こんなの誰が買うんだろ?

そんなのを買ってたら納税者から怒られるので、ほかのpdfの編集ができるのを探してました。日本から、JUSTをはじめ、いろんなところからでてて、アマゾンにランキングもあります。全部やってみました。が、いずれも1万もしないのですが、PDF XChangeに慣れてると、どれも使いづら。またOCRはどれもダメ。Acrobatはさくさくやってくれるのに、実は難しいのか、とどうしたものかと思案してました。

PDFXChange Viewerを出してるカナダのTrackerでは当然ながらその有償版を出してるわけですが、これがいろいろなタイプがあって、どれがどう違うのかが実にわかりにくく、考慮してませんでした。だけどこうなるとやむをえずよく読むと、PDF-XChange Editorというのが妥当な線のようで、お試しでダウンロードしてみました。43ドルしかしませんが、使ってみると、なかなかすごい。pdfの図などが、簡単に移動したり削除したり、Wordのような感覚で使えます。そういう作業はしないでしょうが。しかも日本語のOCR、acrobatに比べると遅いですが、横書きならほぼ認識してくれます。どうも縦書きのほうが認識力が弱いような感じですが、画像の質さえ高ければ大丈夫みたい。

ならばこれを買うかと購入に進むと、アカデミック割引がある事に気がつき、その場合は連絡しろとのこと。早速メールでフォームを書いて送ったところ、すぐに大学教員である事の証明が必要と返信が来て、IDカードかHPのprofileのサイトは無いかとのことだったので、HPとORCIDのresearch profileのサイトを知らせるとこれまたすぐにOKと。メールなのがやや面倒ではありますが、ほかのソフトのアカデミック割引にくらべると時間的には随分早く購入ができました。これだと半額になります。消費税(日本のが適応)がしっかりついて、23.5ドルでPDF 編集ソフトが買えてしまいました。Acrobat pro の月単位購入だと、1ヶ月分にもならない。

そこで長年使ってきたViewerを終了して、Acrobatは削除。これでPCからアドビはなくなり、セキュリティの懸念が一つ消えました。それにしてもまったく、ソフトは調べて買わないとえらい損します。

2017年10月8日日曜日

マザボ交換失敗

単一光子計測、という、光子を数える測定をするのに使うパソコンは、SandyBridgeのCorei7 ,3.3HHzが標準仕様。これをオーバークロックして3.9Gで使ってますが、それでも蛍光寿命の測定をするときには、まともなデータにするくらいの光子をとると、計算にちょっとかかります。気になったのは、CPUの温度で、PCの状態を表示するSpeccyでは40度も行かないくらいですが、Biosでみると、普通に70度超になってます。

SandyBridgeも随分前の世代のCPUなので、ここでシングルコアではほぼ最速のCorei7 7700Kにして、オーバークロックすれば5Gくらい出せるかもと、マザボをASUSのPRIME Z270-Aに入れ替えようと、双方を購入。取り付け自体は、マザボを外して入れ替えるだけなのであっさりできましたが、OSの入ってるSSDをつないでも、Windowsはたちあがるものの、Safe modeのような状態で、いくらいじってもダメ。SATAにつないでるドライブもほとんど認識されない。そもそもSSDも6個ある端子のうち、使えたのは一つだけ、という、なんだこれは、という状態。

いくらやっても解消できず、マザボのASUSのサポートに電話。すぐにつながりましたが、スペックを説明すると、それは全くサポートしてません、と意気込んで言われて、けんもほろろ。ASUSは台湾のメーカーですが、とても良く日本語ができるひとでしたが、何がどうサポートされてないのかわからず、全くサポート外です、と怒ったように繰り返し言われるだけ。サポートされないのはわかったので、こちらはよく知らないので教えてくれと粘って、ようやくわかったのは、なるほど全く、愚かなミス。このOS、英語版のWindows7はCorei7 7700シリーズは対応してない、という致命的な問題。これは気がつかなかった。(追記、これほんとかなあ。もしかすると、WIndows7に対応してないということかも)

マシンを操作するPCなので、Windows10は怖くて使えない、というのもありますが、そもそもソフト自体がまだ正式には未対応。そのドイツのメーカーの人によると、実は走る、ということではありますが、それよりも毎月、いつ使えなくなるかドキドキしないといけないというのは困るので、正式対応版が出ても、入れるつもりはありません。

CPUがOSによって使えなくなるというのはWindowsではあまりないような気もして、うっかりしてました。したかなく、もとのマザボに戻して、それなりにほんとに元通りになるか心配でしたが、何事もなかったかのように、起動しました。ただ、元に戻しただと寂しいので、CPUクーラーだけ交換。元からついてたのは、インテルので、10円玉くらいの面積だけを冷やすタイプ。CPUは長方形なので、設置してない部分の温度が高いのでしょう。インテルが出してるくらいだから、それでいいのでしょうが、今回、Corei7 7700K用に買った、サイドフロータイプの虎徹MarkIIがかなり良かったので、これに交換。この冷却器、水冷タイプではなくて、単純に金属板を押しつけて巨大な放熱板に風をあてる、かなりシンプルなというか強引なタイプ。でも物理的に安心な感じ。取り付けも簡単で、つけてみると、Biosで見ても、50度くらいに下がりました。これくらい冷えれば十分でしょう。

結局、放熱板の交換だけになってしまいました。3.9GHzでてれば、たいして変わらないかとあきらめることに。これが5Gになっても、体感はそんなに変わらないかもしれないしと、無理矢理納得することにしました。Corei7 7700Kとマザボが余ってしまいましたが、どれかにつけてみるか。

2017年9月28日木曜日

Vaio S11にLTEを設定

S11を買ったからにはLTEをいれないと意味ないので、各社見比べて、現時点でこちらの目的に最も合いそうなエクサイトを選択。たまに使うという程度なので、使わないときは最小の値段にという条件で調べると、従量課金のほうがよさそう。申し込んで、6日後にdata専用SIM到着。 接続開始となる次の日に、まずエクサイトのマイページで契約完了を確認して、SIMを挿入。白いので後ろから見るとちょっと目立つけど。

ここからが難題でした。APNを「ネットワークとインターネットの接続」から入って、携帯電話のところから設定するのですが、NTTDOCOMOの、切断済み、の文字が消えません。そのうえに既定のAPNというのがあり、その下にNTTDOCOMOのAPNがあり、いれた内容は入ってるように見えますが、気になったのはNTTDOCOMOの後ろに(HSDPA)というのがついてること。なんだかわかりませんが、どうもこのAPNが正しく認識されてない模様。

ではそのうえの「既定のAPN」を削除してAPNを作り直せば、その下が有効になるだろうと、削除しようとしても、これの「削除」アイコンが操作できない。その上、NTTDOCOMOのAPNを入れ直そうとこちらを削除しようとしてもできない。新規にAPNを入れようにもできない。

しばらく考えて、これはAPNを使っているから削除できないことにようやく気がつき、この「携帯電話」の接続を切って、他のネット情報から機内モードをオンにしてからいったんオフにして、WiFi接続を入れました。この状態でAPNの設定を見ると、相変わらず、「既定のAPN」はでてますが、少なくとも、NTTDOCOMOのAPNは消すことができました。それで新たにANPを入れ直して、保存。今度は、「既定のAPN」はその上に相変わらずでてますが、なんだかその前とは違う印象。よく覚えてないけど。

そこで、WiFiをきったところ、今度はあっさり、NTTDOCOMO(LTE)と表示が出て接続完了。やはり(HSDPA)がでてるときはだめらしい。HSDPAが何なのかわかりませんが、とにかく、接続できました。

ともかく、これでWiFiがなくてもネットにつながるようになりました。NTTの回線なので、これまでのWiMaxよりも格段に範囲が広がります。ようやく新幹線の中でも使えるようになったかな??ネットの評判通り、かなり高速です。ただ、これでリモートデスクトップをするとえらいことになるので、気をつけないといけません。


追記
エキサイトモバイルのこの契約は正解でした。接続が素早く、WiFi並で、当然ながらWiMaxと比較にはなりません。こんなに違うものかと驚きでした。毎月余らせてるので、2G使えますが、ほとんど仕事と家の往復だからというはあるにしても、車の中でも良く使うし出張の時でもつけっぱなしですが、500Mにもなりません。普通のブラウジングやメールで使う通信料はしれるようです。YouTube程度ならおそらく相当見てもまったく余裕。ダゾーンだとどうなるのか知りませんが。リモートデスクトップで心配と上に書いてましたが、全くの杞憂でした。短い時間にしてもよく使ってますが、たいしてかかりません。これで月々500円くらいとは。

2017年9月23日土曜日

エチブロに代わるDNA染色試薬 追記240930

研究系掲示板で度々話題に上がるのが、DNAをどうやって染めるか。これまで使ってきたエチブロでいいものか。実質安全だから使い続けても良いという主張と、変異原性ははっきりと証明されてて、これだけいろんな安全な代替試薬が出てるんだからそれに切り替えるべき、という主張の対立が長く続いてました。いまではエチブロを使い続けてるところはさすがに少ないと思いますが、では何に置き換えるかは悩ましいまま。

うちのラボではずっと以前から、紙にエチブロがしみこませてあるエチブロシートを使ってました。これは紙にエチブロがしみこんでいるのでゲルの上に乗せればよく、エチブロ溶液はつかわず、あとはゲルと一緒にまるめてぽいできるので安全。これはEdvotekというアメリカのメーカーが主に実習用にと開発したもので、そのCOEとやりとりしていたこともありました。日本でこれをひろめようと、コスモバイオの人もやってきて協議したのですが、どうしてもゲルの上に置いて数分待たないといけないし、ゲルの中にエチブロを入れるという、昔は一般的だったやり方より感度が落ちるので、ほとんど広がらず、また、Edvotekもなぜか全く宣伝しなくなりました。彼に何度聞いてもその点だけは答えないので、どうも、問題が起きたのかな?今でも買えますが、今のタイプはエチブロ面のプラスティックシートの接着が妙に強い。察するに、FDAなどから剥がすときにエチブロが舞い散るリスクを指摘されたのかもしれません。

それでエチブロ代替品を調べてて、ちょうどニッポンジーンから ミドリグリーンアドバンスという試薬のキャンペーンがあったので、注文メールを代理店に送った後で、下のPDFを見つけて、すぐに取り消しました。それがこのpaper。
Comparison of Nucleic Acid Gel Stains Cell permeability, safety, and sensitivity of ethidium bromide alternatives

これは各社極秘にしてきたDNA染色試薬の組成をBiotiumが分析したもの。Midori Green Avance も調べられて、この試薬は、なんとアクリジンオレンジとDAPIの混液である事が暴かれてます。ニッポンジーンのサイトを見ると、安全なエチブロ代替品というように書いてありますが。。。アクリジンオレンジもDAPIも単体で買えば遙かに安いというのはともかくも、アクリジンオレンジの変異原性はよく知られているし、DAPIは組織切片・培養細胞の核を染めるのに良く使う試薬で、細胞への透過性もあるので、それなりに気を遣います。ニッポンジーンというと、現在は富士フィルムの傘下に入ったとはいえ、試薬メーカーの大御所、WAKOの関連企業。

このpdfでは他に、似たようなもの、アクリジンオレンジ+DAPIもあるし、DAPIそのもののところもあれば、また、PIというDAPIと同じように良く使う核染色試薬も堂々と別の名前で、元化合物よりも遙かに高い値段で売られてます。PIは、DAPIよりほとんど細胞内に浸透しない分、ましなのでしょうか。いずれにしても、ひどい商売。

エチブロ代替品としておそらく一番広く使われているSYBR SafeはThiazole orange誘導体だそうです。この情報は、どうも、2012年に
  1 H and  13 C NMR Assignments for the Cyanine Dyes SYBR Safe and Thiazole Orange
という論文で、JOCに報告されたのが最初らしい。しかし、先のBiotumのpdfでは、この化合物は、DAPIと同じように細胞膜透過性があり、この「安全性」を証明するほ乳類細胞での変異原性試験では実際に使う濃度よりもずっと低い濃度をつかっていたということも暴かれてます。ほんとなら、ほぼ詐欺。

この試薬、今はThermoFisherで売られていて、Thermoといえばどこでも吸収合併しまくってる試薬業界の最大手で、SYBRシリーズはエチブロの代替試薬として、ほぼ主流になっているようです。この業界は、こんな悪質なことがまかり通る世界なの? 確かに、研究試薬は、食品でも医薬品でもなく、規制が緩いので、メーカーはそれにつけこんでるのでしょうか。確かに、がんになっても関連性が証明できないから、訴えられるわけもないし、そもそもこれを使ってる人は食品・医薬品業界にくらべて圧倒的に少ない。

ただ、この論文では、同時に、Biotiumが作ったGelRedとGelGreenの優位性、つまり細胞膜透過性が無く、ほんとうに変異原性がないこと、を証明するためのものなので、微妙なところもあるのですが、こちらにしてみれば、手前味噌でかまわないし、貴重な情報です。だけど、GelRedの組成がなんなのかは書いてないというオチがついてますが、これを機に、他社もGelRedの組成を調べて欲しいもの。でもここまで言ってるからには、安全性は大丈夫でしょう。

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追記 GelRedは感度が高く、一般ゴミに出せるくらい安全性が高いということなので、ラボではこちらに切り替えようとしています。泳動後すぐに見れるので、昔のエチブロ入りのゲルで流してたときみたい。エチブロより高感度ですが。ただ、ネックは、DNAラダーが、あんまり美しくないこと。強く結合しすぎるからか。特に高分子量がうまく分離しません。さらに、移動度がLadderに比べて早い。なぜ?それで何か手はないかと調べると、本家のサイトでは、DNAの量を減らせ、とのこと。まあ、そうでしょうが、これはたいして役立たずなので、他を探しまくったところ、以下の改良法を発見。
http://bitesizebio.com/25078/faster-even-cooler-dna-gels/
まだ試してないですが、ナトリウムの代わりにリチウムを使い、酢酸イオンにホウ酸イオンを加えたバッファー、LABにするというアイデア、これはよさそうだ。

さらに追記
上記のLABバッファーは秀逸でした。こちらに切り替えました。ただそれでもDNA ladderの3K以上が団子になりがちなので、量をぎりぎりまで減らすことと試料と同じsample bufferを同量添加することで、ほぼきれいに分離できるようになり、また、サンプルの移動度の異常さもなくなりました。これで手間が減り、エチブロよりもかなり高感度になり、なにより安全になりました。Biotium、えらい。

もうちょっと追記
ただのような試薬に別の名前をつけてあたかも特に開発したようなものとして高く売る、というのは、どの業界でもある事で、よくいわれるのが ブロッティングなどの増感に使うCanGetSignalという試薬。これはカゼインに4%くらいのPEG6000が入ったもので原価はすごく安いですが、このラベルの貼られた瓶に入れられると一万円以上します。だけど、PEG6000の濃度を振って自分で作ればもっと至適なシグナル増幅ができます。こういうのは多いですが、商売はそういうもので、試薬自体は無毒だから問題はなし。こういう情報は特許として公開されていて調べればすぐにわかることです。ミドリグリーンの悪質さとは訳が違います。

あまりにアクセスが多いのでひとこと追加
DAPIは細胞膜透過性があると書きましたが、細胞膜をたとえばヘキスト333342ほどスカスカ通過して核内DNAを染めるわけではありません。 かなり遅い。だけど、分子構造からわかるように膜に親和性があり、ゆっくりと浸透します。アミノ基があるだけなので。細胞毒性はあるけど、genotoxicityや変異原性はないという報告はあります。ただWikiによれば、mutagenとこの化合物の製造過程では表記されているそうです。


もっとアクセスが増えてるのでさらに調べて追記
これを書いてから2年近くが過ぎようとしてます。Biotumからの追加情報はないかと見たところ、CCR Title 22で水溶性で無毒性廃棄物であることが認証されたとの新たなpdfの中に、細胞内には侵入しないというデータの他に、Amesテストの詳しい結果が出てました。エチブロではもちろん高い変異原性がありますが、代謝産物でもGelRed GelGreeenは相当高濃度でも無害で、SYBR Greenはなぜか低濃度の一定の範囲においてエチブロよりも高い変異原性が見られてます。叩きますねえ。

さらに追記240930 GelGreenへ 
NIPPONgeneticsによるとMidoriGreenはアクリジンオレンジとDAPIの混合液ではない、とのこと。確かに、吸収スペクトルを調べると、よく似てますが、ちょっとずれます。たぶん、これらの誘導体か、混ぜてるか、のようです。
 ともかく、これを使うメリットは、~400nmくらいのLED照明でもUV励起でも、ゲルに加えて泳動した際に高分子量領域の分離がGelRedに比べていいことですが、GelGreenという、GelRedのあとに出た色素を使うと、圧倒的にGelGreenのほうが高感度で、というかずっと明るく、また、希釈も10万倍で十分で(Biotiumは一万倍希釈でといってますが、これは謎)、1/2TBE中で泳動すると、分離能はMidoriGreenと遜色なく、高分子領域でも良好。これなら価格面でもエチブロ溶液よりも安い。100uLのトライアルサイズので、10Lのゲルが作れます。
 安全性も代謝物存在下での変異原性試験では、濃いGelRed溶液では、ほんのちょっとだけ水よりも高い変異原性を持つのに対して、GelGreenは濃い溶液でも、水と同レベルというデータが出てます。またGelGreenもGelRed同様に細胞膜を透過しません。これは重要。ただし、GelGreenはほぼほぼLED照明専用で、UV照明ではみえません。GelRedとはそういう使い分けのようです。
 私が宣伝するメリットもないのですが、ともかく他の色素とは比較になりません。GelGreenに切り替えました。

2017年5月11日木曜日

「ユキの日記」

本を読むのは寝る前のわずかな時間。あんまり面白いとそれが寝不足になってしまい、その加減が微妙。騎士団長のあとは、火星の人、久々のSFでした。SFというより、火星に降り立った際に、いかにも起こりそうなほんのちょっとしたトラブル。それにどう対処できるかを、かなり科学的に正しく(ふと思ったのだけど、politically correctとは良くアメリカ人が言うけど、scientifically correctというのか)検討して、火星で生き伸びるにはどうすればいいか、について書かれた、良きアメリカ人の奮闘の物語。久々の一気読みSF。

おかげで寝不足。さてと、次に読む本を物色してたとき、「ユキの日記」に目がとまりました。これは、心理学者の笠原嘉が編集した、若くして亡くなった女性が21歳の分裂症(いまでいう統合失調症)発症時までつけていた60冊の日記。最後の担当医だった彼に、役に立てばとご家族が持ってこられたものだそうです。この本、いつだったか、東京の高架下の近くにあった小さな古本屋で見つけて読みもせずそのまま本棚に置いてたのを、去年の暮れにスキャンしてPDFにしてaura oneの中にいれてさらに眠ってました。うしろのほうをぱらぱら読んで驚きました。

心理学の本、若い頃、よく読んでました。上智大の教授だった霜山徳爾がお気に入りで随分買いあさりました。笠原嘉の「現存在分析」もそんな頃、天神コアにあった紀伊國屋で見つけた本の一つ。今頃知りましたが、後書きによると、彼は名古屋大の先生だったらしい。この本、何度も読みました。

こういう心の奥底に降りていく作業、好きというよりは、その頃生きていく上で必須でした。若い頃、嵐のような、ぴりぴりした毎日の中、そうやって心の根元までおりてパッチをあてられたのは、これらのおかげかもしれない。そういえば、騎士団長のクライマックス、メタファーの世界に降りていって暗い谷底をさまよい歩くさまは、その作業に似てる。

ユキの日記、驚くほど詳細な心の記録です。ひどい喘息に生涯悩まされ、健康な青春は夢でしかなかった女性。文字を覚えて文章を綴れるようになる8歳から、心が成長してしっかりしたとても豊かな表現を獲得するようになる15歳あたり、そして次第に病んでいき、逃れることができなくなっていくまでの格闘の記録です。そして、そのあふれるほどの才能が実に悲しい。もしうまく世界と折り合いをつけることができていたならば。

ユキのその頃の詩から、

「春は来るまい、
花はもう再び咲くまい、
碧い空が頭上高くひろがり
そよ風吹く緑の芝の上に
おどる陽ざしを見ることはあるまい。

心よ つぶやくな
あせるな、あこがれるな、
・・・」

何よりも美しいのはHさんに恋心を抱いていた頃の記録。彼女の、短く薄幸としかいいようのない人生の中で、もしかしたら一番輝いていたときなのかもしれない。Hさんのちょっとした仕草、言葉のやりとりに喜び、涙し、憎み。だけど、彼は修道院に入ってしまって遠い存在になり、彼の名前はいつしか消えます。一度、彼女が修道院に行ったときにも会うことすら許されない。彼女の恋は実ることなく、癒えることなく、そうするうちに心が次第に壊れていきます。

だけど、その頃の彼女の日記には、破綻しつつも、はっとさせられるものがあります。

 「孤独になれば私の病気はいえる。そして今、私は孤独になることができる。私があるから・・・。内省してここに私があると思うことができる。この私がなかったのではないか。 そしてこの今という時が。われを忘れて考えにふけっていることはできても、こうして一人で自分にはなすことはできなかった。
 私はいえたのだ。精神分裂症から。私の病気でさえなかった。私がなかった・・。まわりもみわたしても閉ざされた部屋の中にいるような心地がした。さびしいという哀しさでさえなく、頼りなかった。私さえなくて頼りなかった。何もかも過去の遺産だった。過去にとらわれていた。自由がなかった。おそろしいことだった。自由にたのしんでいる。テニスを見ている女の人を後からみたときの苦しかったこと・・・ うらやむ、本当にうらやんだ。健康なすべての人を。みな自分があった。自分のたのしみが・・・。
 私は今ここに、私がいる。しずかに・・・ 何も持たず、希望も能力も友もなく、ここに・・・ しかししずかに。このおだやかな感じこそ私だったのではないか?何もなくても待っている私、責任をとり誠をつくす心の私。私は部屋を見回す。そして部屋があるのではなく、私があるのを感じる。真にここの主として。とざされてとらわれているのでない。」

「大空がある。星がきらめく、数えきれないほど・・・。そしてこれを見る私、それはこの大空のきらめきに答える私だ。大空を感じる私ではない。感じるということは何ものでもない。ここに私がいる。私はしずかに自分を感じる。この私、それはただ私のためにだけあるのだ。そして私はこれを大切にしなくてはならないのだ。」

この巨大な、私。どうやって取り扱えばいいのか。若い頃の苦しみはいつもこれ。だけどたいていはいつのまにか折り合いをつけて、つけざるをえなくなるか、誰かなにかが、それこそ騎士団長のように手助けをしてくれるかして切り抜けて、気がついたらそんなことがあったのも忘れて年をとっていきます。だけど、彼女の場合、そこから出ることができなかった。防具がなかった。素手で闘い、もがく彼女に、いいんだよ、とは誰も云ってくれなかった。

精神病理学のおそらく格好の材料なのかもしれません。でもなにより、その絶望的な格闘は、胸を打ちます。

2017年5月2日火曜日

Outlookのプレビュー画面が出ない

ときどきOutlookがおかしくなることがあります。この前は、メールのURLをクリックしてもブラウザに飛ばない、というトラブル。以前書きました。

今度は、プレビュー画面が出てこないという、はじめて遭遇する謎の症状。表示>閲覧で右や下を選べば、メールのプレビューができるはずで、他の設定は見つからず、あれやこれやとやってみて、ふと、ひょっとしてこれも、Windows10の更新の仕業では、と再び、netsh winsock resetをコマンドプロンプト(管理者権限)で打ち込んで、再起動すると元通りに表示されるようになりました。

どうやら、Windows10が勝手に更新するときに、Windowsのなにかの設定をやり忘れてしまうとか、そんな感じらしい。他のソフトで影響を受けることはないようですが、なぜかOutlookには来ます。いつ更新したかさえわかれば見当もつくのに、何の通知もなしにされるのでいい迷惑。これを外して、更新時期を選択できるようなソフトをどこかで見かけたのだけど、どこだったのか。


というのを書こうと思ったのでなく、予定してたのは、ScanSnapのローラー交換の話。このiX500、買ったときはここまで強力なマシンとは想像もしてませんでした。すでに、たぶん1000冊くらいは本を自炊したので、文庫からでかい教科書までたぶん20万枚くらいの様々なサイズの紙をスキャンしたことになるのかな。そろそろゴムローラーはすり減る頃と、ローラーを交換。


上は、紙を吸い込む方のローラーで(下が古い方)、左がビックローラーと書いてあった、紙を送る方のローラー(古い方は左側)。さすがに随分すり減ってます。

こんなのに8000円とはちょっと高い気がしないでもないですが、ここまでたいしたトラブルなしに本をすいすいスキャンしてくれたことに感謝して、迷わずに投資(というほどかというのはさておき)しました。

もともとトラブルもなかったので、替えても何も変化無しですが、本の裁断が悪くて、2ページがちょっとくっついたところをなんなく引きちぎってくれたのは、このおかげかな。これだけ使い込んでも、他には何の劣化も無し。この富士通の技術はまったくすごいものがあります。これとChainLP無しには蔵書の電子化はできませんでした。 ありがたや。