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2017年10月13日金曜日

Sephadex

Sephadexはたぶん最初に学んだ実験素材。デキストランの架橋体で、スウェーデンの優れた高分子化学の研究から産まれたと聞きました。生化学では欠かせない素材です。今でも、分子生物学の実験で良く使ってます。あまり一般的な使用目的ではないとは思いますが、これを使うとクローニングが良くできます。

今回、ちょっと違ったイメージングの目的で、なかなか使えそうな素材が見つからなかったとき、ふとこれが使えるかもと思ってやってみると、これが正解でした。生化学の正しい使い方をしていたときは考えたこともなかったですが、これを顕微鏡で使ってみると、きれいな形をしています。ならばと、走査型電子顕微鏡でみてみると、こんな感じ。これは300倍、かわいらしい形で、G-50という良く使うタイプ。fineというサイズ、大体、20-80umとありますが、ほんとにそれくらい。

なかなかきれいです。1300倍ではその均質な網目が見えてます。

 この網の中をタンパクやDNAが入って、大きさによって移動する速さが異なることで大きいのと小さいのを分離できます。網目を3万倍で見たのがこちら。


 この襞の厚みは大体、200nmくらいでしょうか。分離できる分子量は30000以下、とされるので、2nmあたりがこの隙間を通れる限界ということでしょうか。ただ、この撮影、水を吸ってない状態で見てるので、水につけると数倍でかくなります。デキストリンの化学反応だけでよくこんなものができるものです。

これを開発したのはPhrmacia、懐かしい名前です。その後、GEバイオサイエンスに吸収されました。いまでは試薬の最大手のシグマからも買えます。このG-50はGEからので、シグマから買ったG-100があったので見てみると、

G-50よりも目が粗いのがよくわかります。これはfineなどのサイズ分類が書いて無くて、ビーズの不均一さが目立ちます。実際、3万倍では、
 こんな感じ。編み目が随分粗いのは分画できる分子量が球状蛋白で15万以下と、G-50より大きいので、道理。でも15万のタンパクでも4nmくらいとすると、この隙間、遙かに大きく、G-50とは随分違う印象。このゴミのようなのは何でしょう。これも隙間を埋めるのに働いているのか、それとも単に合成の品質の問題なのか。もっとも水が入るとG-50よりもふくれるので、実際にゲル濾過で使うときにはどうなのかわかりませんが。ひょっとして、壁がふくらみ、隙間が埋まるのでしょうか。また表面の襞の密度も場所によってかなりムラがあります。この写真では、中央は密だけど、周辺は粗になってます。なんとなく、合成の品質が落ちるような印象。どこかにOEMさせて作ったものなのかな。

ともかく、こんなのを合成できるほど優れた技術を持ってた会社がなくなってしまったのは寂しい限り。それにしても水を入れたらどうなるのか見たいものです。だけどそれは意外と難しい。