緑の袖
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2018年9月16日日曜日
斧の思想
石原吉郎の「斧の思想」のなかにある「フェルナンデス」という詩、
「(前略)
・・・・・
しかられたこどもが
目を伏せて立つほどの
しずかなくぼみは
いまもそう呼ばれる
ある日やさしく壁にもたれ
男は口を 閉ざして去った
<フェルナンデス>
しかれたこどもよ
空をめぐり
墓標をめぐり終えたとき
私をそう呼べ
私はそこに立ったのだ」
シベリアで抑留され、おおよそ人が望まないような人生を強いられたこの詩人。フェルナンデスとは、壁にもたれていた「男」のこと。それ以上は何も語られていない、影のように、この詩人は、彼のもたれていた壁のくぼみを見つめている。
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