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2019年12月29日日曜日

終わります

このブログに移ってからなんと5年が経ちました。これを入れて334ページ、飽きやすい私にしては随分長く続きました。2019年も暮れることだし、年の終わりとともにこのブログの公開は終了にします。緑の袖、とは、もちろんグリーン・スリーブスのこと、私は英国に古くから伝わるこの曲がとても好きです。

ボットは別にしても、いくつかの記事がいつまでも引用されるようになり、もちろん情報提供になればと書いてる部分もあるので、役に立てばうれしく、長く開けてました。だけど、所詮は自分用のメモで、そのときの気分で書いてるわけで、あんまり長くさらしておくのも品がない。なにより、情報も古くなります。

またどこかで書きます。なるべくGoogle以外にしたいけど、bloggerのようなのがあるかどうか。このブログ、年開けてからもしばらくはこの記事といくつかを残しておきます。読んで頂いてありがとうございました。

追記
次のブログ、わかりにくくてごめんなさい。
です。

1年後の追記
いまだにアクセスも続いており、役に立つのなら、このまま残しておきます。

2019年12月21日土曜日

核融合炉の競争

核融合発電がついに、実証段階の競争になってきました。25年までに国際共同プロジェクトITERが実証を開始することは以前から表明してましたが、同じく25年までにGeneral Fusionというカナダの会社が、アマゾンのジェフ・ベゾスなどの支援を得て総額330億円くらいで磁化標的核融合方式という、これまでの方式の融合したやり方を使った核融合発電の実証プラントを稼働させるという話です。

ITERでは2兆8千億程度になると見られているので、それに比べて大幅なコストダウン。現実味を帯びてきました。330億、世間一般的にはものすごい金額ではありますが、東京オリンピック会場よりは遙かに人類への貢献になります。この装置、ポイントは液体金属のようで、これで電磁場で超高圧を実現し、熱交換を可能にする、という理解で正しいのかな。すでにこれは建設がはじまってます。
https://gigazine.net/news/20191217-general-fusion-nuclear-bezos/

ただ、まだ核融合による発電ができたわけでないですが、理論的にはできてるので、実証としてそれを証明する、というところなのでしょう。こんななか、中国が来ないわけがないわけで
https://gigazine.net/news/20191220-china-artificial-sun-fusion/

2006年に建設が完了したこの核融合炉EASTは昨年、1億度(ケルビン?)を達成し、来年には2億度に到達予定で、試験運用の開始だとか。ただ、温度だけなら日本の原研が5億度、しかもプラズマ封じ込め時間を28.6秒達成しています。この中国のEASTの特筆すべき点は、お値段が3700万米ドルくらい。カナダのより一桁安上がりのようです。

いずれにしても太陽の核の温度1500万度を遙かに上回っています。一億度なんて、レイ・ブラッドベリの世界と思ってました。ITERでは25年には50万キロWの出力を予定してるらしいけど、中国のはどれくらい行くのでしょう。永久に到達しない、文字通りの夢の技術とも揶揄されてきましたが、近づいてきました。こういう競争には、わくわくします。


興味ないらしい。。。




2019年12月14日土曜日

ワインズバーグ、オハイオ

なかなかこれといった本に巡りあわず。そんな中、たまたま開いたシャーウッド・アンダーソンの「ワインズバーグ、オハイオ」。知らないはずはないのです、この作家。「アンダーソン短編集」は、実家の本棚に今もあります。だけど、中身はほとんど覚えてない。確か、この本を買った頃はフォークナーにはまっていて、その流れで買ったのかもしれない。マッカラーズと一緒に(そういえば、今、「心は寂しい狩人」を読んだらどう感じるだろう)。

「「いいかい、女なんだよ。女がここにいるんだ!そして、美しい人なんだ!女は傷つき、苦しんでいるけど、音は立てていない。それがどういう状態かわからないかい?女は静かに横たわっている。真っ白で、微動だにしない。そして女から美が流れ出て、すべてを覆っているんだ。この背後の空にも美があるし、そこらじゅうにひろがっている。もちろん、僕はその女を描こうとしなかった。美しすぎて描けないんだ。構成だとか、そういうことを話すのって、なんてつまらないんだろう!どうしておまえらは空を見上げ、走って逃げたりしないんだ?オハイオ州ワインズバークで僕が少年時代にやったように。」
 そういったことを、若きイーノック・ロビンソンは言いたくて震えていたのだ。ニューヨーク市で過ごした青年時代、彼の部屋を訪ねてくる客たちに向かって言いたかったのだが、結局のところ何も言わなかった。・・・」(「孤独」、上岡伸雄訳)

オハイオの架空の街、ワインズバーク、地元紙の編集長助手ジョージ・ウェイラードの周りに起きる、ごく些細な、だけど切実な物語が淡々と語られます。まるでアルトマンのショートカットのように。この本、ずっと前に買って本棚に並んでたのを裁断してKobo aura oneの中にしまい込み、次を漁っていた中で見つけた作品でした。読んでるときは現代の作家かと思ってましたが、フォークナーにも影響を与えた人だとか。アメリカ文学を語る上では重要な作家らしい。

アマゾンのこの本のところを改めてみると、この本のコメントに、エドワード・ホッパーの絵が好きな人ならこれはきっと好き、とあって、ものすごく同感。そうなんです、広い、何にもないところにぽつんと一軒の家が建っている、そんなアメリカの原風景を描き続けたホッパーは、とても好きな画家。画集をばらして部屋に張ってました。

上にあげたのは、ワインズバーク生まれの絵画の才能のある穏やかな青年イーノックが、21才のときにニューヨークに出てきたときの話。多くの芸術家仲間が部屋に来るようになり繰り広げられる芸術談義の中でも自分は乗ることができず、次第にドアに鍵をかけるようになり、 結婚もうまく行かず、そのうち、空想の中の人々と一緒に楽しく過ごすようになります。「どうしておまえらは空を見上げ、走って逃げたりしないんだ?」、だけど、そう伝えられない、そんな心のもどかしさ、やるせなさ。

イーノックはそうしてニューヨークでの生活を15年続け、ある出来事がきっかけで、ワインズバークに戻ります。そして、年老いたイーノックが、「歩道の上に伸びた木製の庇の下で出会った」ジョージ・ウェイラードに話す、「何一つ実現しなかった」人生の物語がこの作品です。なぜ話したのか。

「青春の悲しみ、若い男の悲しみ、年が暮れた町にいる成長期の少年の悲しみが、イーノック老人の口を開かせることになった。悲しみはジョージ・ウェイラードの心の中にあり、意味などなかったのだが、イーノック・ロビンソンの心に訴えかけた。」

この物語は、こんなふうにはじまります。

「彼はアル・ロビンソン夫人の息子だった。夫人はかつてトラニオン街道から分かれる脇道沿いに農場を持っていた。ワインズバークの東、町の境界から三キロのところである。農場の家は茶色に塗られ、道に面したすべての窓のブラインドはいつも閉ざされていた。家の前の道にはニワトリの群れがいて、二羽のホロホロチョウとともに、分厚い埃をかぶっていた。・・・・」

なんと見事な描写。

そういえば、という流れで書くようなことでないけど、自分の話。ポスドクでモントリオールに行ったとき、もう一つ、オハイオの大学からも話がありました。研究はそちらの方が惹かれたけど、やはりモントリオールという街の魅力には抗しがたく、3秒考えて、モントリオールにしました。もし、あのときオハイオに行ってたらどうなってたんだろうと、ときどき思います。ともかくモントリオールは面白かった。惹かれるという感覚は結構正しいものなんだなと思いました。

たぶん、この小説はそういうことなんです。オハイオ、というところのイメージは。今は大都市になっていて全然違う世界なんだろうけど。だけど、そんな世界に語るべき物語がある、とシャーウッド・アンダーソンは言いたかったのかもしれない。あと100年たっても人々の記憶に残る物語。

アンダーソン短編集を実家の書棚から今度かえったときに探してこよう。

2019年12月7日土曜日

たまにはねこを

時計ばかり書いてないで、ねこ載せろ、というご要望にお応えして。

ぶれてますが

女房の膝の上で至福のひととき。

じいさん顔を撮りたいのですが、なかなかまともに撮らしてくれません。

この場所はいつも争奪戦です。女房がブロックしてます。

夜に、暗い部屋でクロを撮ろうとすると、苦労します。このかわいさが・・・

2019年12月5日木曜日

新たなスマートウォッチでSAS検出

買わないだろうなと云った端から買ってしまった、スマートウォッチFitup V12。Alibaba.comからは前回同様、全面テープ張りの箱で来ました。結局、送料込みで55.9ドルでした。Alibaba.comはchatで気楽に聞けてすぐにレスポンスもらえ、しかも、その記録がマイアカウントの中にずっと残るので(これは地味だけど、すごいサービス)、安心です。買ったあとでわからないところはさくっと聞けるし、アマゾンよりずっと信頼できます。

この箱、なんでこうなるのと思いますが、ただ、頑丈で、もし濡れても平気そうなことは確か。ともかく中はちゃんとしてます。当然ながら。
V12です。CPUはnRF 52840、 220mAhのバッテリー。酸素飽和度のためにOsram SFH 7060という光電センサがついてます。これには3個の緑色LED (530 nm)、1個の赤色LED (660 nm)、1個のIR LED (950 nm)が組み込まれてます。
センサはこういうものです。相当なハイテクチップですが、要はLEDとフォトダイオードなので、いまでは300円くらいで買えるらしい。肉眼では緑と赤しか見えず、もちろんIR LEDからの光はみえませんが、赤とIRがポイント。これはパルスオキシメータと同じで、酸素濃度検出のために、酸素を持たないヘモグロビンは酸素と結合したヘモグロビンよりも660nmの赤い光を多く吸収し、だけども950nmの赤外光だと酸素があってもなくてもほぼ変化ない、という原理を使ってます。つまり、赤外と赤色光の吸収の差を取れば酸素濃度(ほぼ血液中の酸素飽和度)がかなり測定できるはずです。530nmの光は、脈拍用かな。

まずは充電を説明書にあるように90分以上行って、セットアップ。画面の長押しましたが、反応無し。よく見ると、スイッチはサイドにありました。あとは本体でやる事はないので、アンドロイドのFitupでセットアップで、ここで結構時間がかかりました。なかなかブルーツースがつながらず、時計をオンオフしてなんとかセットアップできました。とはいっても、一旦つながればV09Sと同じアプリを使うので、たいしてやることはありません。

振動で画面を表示させる機能は使わないかと思って最初は外したのですが、画面をタップしてもオンにできません。よくわからないのですが、あきらめて、振動で表示させるように、最小感度で設定したところ、画面をタップすると(おそらく振動で)表示されるようになり、とても使いやすくなりました。

V12では画面タップが使えないのではなく、スマホのように上下左右に画面上で指をスライドさせることで他のメニューに切り替わります。横だけでなく、上下にも別画面があります。斬新。画面が広いので、なかなか見栄えします。どうでもいい画像も多いですが。時刻表示画面にはいくつか選択でき、


こういうシンプルな表示を選びました。機能自体は前のV09Sと同じで、新鮮さがないですが、それはこちらの問題で、ほぼ期待通りです。アンドロイドとの接続は、一度つながって以降は簡単に接続できるようになりました。

そもそもこれを自分用にも買おうと思ったのは、V09Sをつけてみていたときに、実は、睡眠時無呼吸の状態が度々起きてることがわかったからです。一度は、92%近くまで下がって、アラームに起こされました。ただ、このときは、きつかったこともなく、何が起きたのかわからずしばらくぼんやりしてました。これがそのときの記録。結構時間かけて落ちていって、目が覚めてすぐに回復してます。このときは無呼吸状態を9回とカウントされ(○の位置がそうらしい)、中度の睡眠時無呼吸と判定してます。いわゆるSASですね。

 だけど、ここまでのは滅多にないようで、だいたいは←くらいかな。このときは最低値は96%くらいです。ライブモニターしながら実際に調べてみると、息を止めて1分くらいでこれくらいまで落ちます。

上の時は熟睡状態でしたが、アラームに起こされたときもとくに呼吸が苦しいとも感じませんでした。全く自覚がなかったので、結構、危険なこともあるのかもしれません。こういうモニタリングはした方が良さそうです。

このために、0時から7時まではずっとLEDが点灯してモニターしてるようです。意外とバッテリーが持つものですが、前に書いたように、そうでないと、アラームにならないですよね。


ただ、V12では睡眠状態の情報がしょぼくて、最初に買ったP11と併用することにしました。こちらのほうが心拍変動や歩数情報は実感を反映します。でも、暑くなると、2つはめは目立つかな。完全にアルゴリズムの問題なので、V12がversion upしてくれることを願います。ともかく、こんなのが送料は別にすれば37ドルくらいで買えるなんて、すごい時代だ。これをつけてないと、insecureな感じすらします。

2019年11月22日金曜日

消えないIMEを消す方法

日本語変換にはATOKを昔から使ってます。マイクロソフトIMEは設定してないこともありますが使いづらく、当然、外していました。ところが、これがいつの頃からか、勝手に出てくるようになってしまいました。

困るのは、前にも書いた、PureTextという書式を外して文字だけをペーストする機能を使うとき。この設定はCtrl+Shift+vが便利で、よく使うのですが、これをやると、どうもそれが言語設定を表すようで、言語設定が切り替わってIMEになってしまい、またATOKに戻さないといけません。このために、Windowsボタン+スペースで入力を切り替えることはできますが、英語、ATOK、IMEと3つ選択肢があるので、とてもいらいらします。

日本語変換は、Windowsのスタート画面の 地域と言語>言語>優先する言語 日本語>オプション で設定するわけですが、ここにはIMEは削除したので、ATOKしか出ません。ところが、なぜか、IMEが実際には残っていて、Windowsボタン+スペースを押すと、IMEも出てきて、これがどうやっても消えません。

ネットで探すと、やはりATOKユーザーによる、消したはずのIMEが出てくる、というゾンビIMEの相談が各所にあり、回答はいずれも、上の決まったやり方しか書いてありません。もっと丁寧に書いてありますが。Windows10の更新に伴ったバグかとも思いましたが、こういう質問自体は以前から出ています。

人に頼るな、というわけで、頭を冷やして熟考。たぶんこれは削除に失敗していてコマンドのリスト的には削除になっていてもそれが実際の処理に反映されてない、宙ぶらりんということ。ならば、そのリストを新たに作って、そこでもう一度消せば良いだけでは?

そこで、まずは逆に、IMEを上の設定で一旦正しく追加しました。念のために、スペース+Windowsキーで確認すると、IME ATOK 英語の三つが出ます。ここでIMEが2つでたらダメかと思いましたが。ありえないのかな。そこで再起動して、上の設定にはいって、ここでもう一度IMEを削除して、再起動。

すると、あれだけ悩ませられて、どうにも消せなかったIMEが、あっさり消えました。Ctrl+Shift+vしても大丈夫。嘘みたい。こんな単純なことだったのね。

ならばと、同じような症状でIMEが消えずに困ってたVaio S11でも、全く同じようにしてみました。すると、こちらもどうやっても消せなかったIMEが出なくなり、PureTextを安心して使えるようになりました。ほっと一息。

おそらく、言語の設定のときにIMEを削除した後で、再起動せずに使い続けていた結果、実際の削除が完了せず、操作記録に実際の処理が反映されなかったということかと。PCのトラブルは、こんな感じで、作り手の意図を離れた操作が多いので、サポート担当の人は、ほんとに大変だろうと思います。さすがにこれはもうやらないと思うけど、誰かのお役に立てばと、備忘録。

2019年11月20日水曜日

大学構内に立てこもる学生たち

香港の世界的に有名な大学の中で、学生たちが立てこもっています。香港の若者らの激しい抵抗は、外の人間が安易に言葉を発することをひるませるものがあります。犯罪者の引き渡しの法案に端を発した、若者を中心とした抵抗は、あまりに無関係な破壊につながるようにみえ、どうなのか、と、確かにそうだろうと思いつつもためらってみていました。

中国は理解できない国です。遊びに行くと面白いことが多く、楽しいですが、ちょっと組織でつきあおうとすると、必ず党委員がついてきて、彼らは影のように何もしませんが、何か妙です。政府は一党独裁を根底にするので、それに反するものは絶対悪という、今の世界の常識からするとくらくらする国です。そういうことを大学で話すと、13億、様々な民族と文化を収めるにはそれくらい必要だろう、というひとごとで納得させようという話も必ず出ますが、だけどそれはやはりおかしい。あれだけの科学技術と文化のある国で、なぜ、それこそ止揚することができないのか。

香港にいままで暫定的に与えられた自由が、奪われてしまう、そのことに何よりも敏感な若者が、今、絶望的な闘いの中にいます。中国政府がほんのちょっと力を入れるだけで、彼らはつぶされてしまう、そのことは誰よりも彼らが一番よく知っています。

光のない闘い、だけど、それこそが、私にはこの世界の希望のように思えます。軟着陸がありえないことはわかっていても、選択を求める、その希望だけは、絶やさないで。

2019年11月15日金曜日

CO2インキュベータを修理したという話 追記241001

NuAireというCO2インキュベータのブランドがあります。アメリカでは割と名の通ったメーカーで、そのNU8500という、75Lという大容量のwater ジャケットを持つシングルチャンバータイプをこの17年間くらい使ってきました。買った初めはトラブルが相次ぎましたが、その後は特に問題もなく、311の震災の時も、ベンチから落ちたものの、台の上にあげたところ難なく作動しました。5年ほど前におかしくなりみてもらったところ、CO2センサーの不具合ということで、修理して24万取られました。新規に買うと100万はするので、それよりは安いと払ったものですが。

この装置、再びCO2の表示が20のまま動かなくなりました。細胞培養は本業なので、さすがに他にもいくつか炭酸ガス細胞培養装置はありますが、この装置が一番のお気に入り。5年前の時は、もうパーツがないので次にトラブったら終了ですといわれていて、その通りに今度は地元の代理店も動いてくれません。

ただ、表示も温度もちゃんとしてるし、明らかにCO2センサー周りの不具合、おそらくそれだけで、どこか地元でやってくれるところないのかと、他の業者に聞いたりもしましたが見つからず。

だけど炭酸ガス培養装置なんて単純な装置で、しかも今回は電源もメインボードも動いてるので、これで修理できないわけがないだろと思い、上の制御部分を開いてみました。ねじ二つでがばっと上蓋が取れます、こんなの好き。

すかすかの、単純な構造です。電源、メインボード、バキュームポンプと、CO2センサーでできてます。ガス配管も、見ればわかる程度。電源系も簡単で、CO2センサーも一つのボードに載ってます。この炭酸ガス培養装置の仕様書がネットにころがってました。上蓋をはずすと出てくる制御部はこんな感じ。下側がフロントです。
真ん中にあるのがポンプで、右の四角なものがCO2センサー基板です。この2つが、加温できるようなアルミの枠の中に囲まれてます。ヒーターがこのアルミ板についていて、蓋を開けるともわっときます。電源部はその左にある長四角なもので、小さなボードに載り、メイン基板は下側についてます。

CO2センサーはこちら。幸い、この名前がボードにありました。VTI Valtronics のModel 2015SPI-3。ネットで探すと、このパーツの仕様書が写真と共に見つかりました。

左の丸いのがセンサー本体でこの丸い気密室の中にガスが入ります。CO2は赤外を吸収するので、赤外LEDで照らしてフォトダイオードでその吸収を読み取るものと思われます。

これならボードごとどこかに売ってるだろうと、ネットで探すとeBayでいくつも見つかりました。新品も販売されてるようでしたが、購入できるところがみつからなかったので、230ドルくらいの中古を買いました。送料込みで3万円弱。この炭酸ガス培養装置は古いのでパーツがないと業者はいってましたが、これは2015年のモデル。業者さん、調べてから言いましょう。

eBayからセンサーが到着したので早速取り付けました。簡単で、左側の端子2箇所にケーブルをさして、左側のセンサー本体にガス配管をしっかりするだけ。2-3分ですみます。電源を通すと、赤いLEDが2箇所光り、下のPower on indicatorと右上のIR source ON/OFF indicatorで、後者はゆっくり点滅してます。たぶん、赤外LEDの点灯を意味してるのかな。

制御部の蓋を閉めて、再び水を張ってしばらくすると温度の上がりを待ちます。このときすでに、CO2の表示が変わり、DRYの文字が出て、異常な表示ではなくなりました。CO2センサーは湿度が十分でないと正しく作動しませんが、2-3時間でまともそうな数字が出てきました。しばらくすると5%で落ち着いて、ドアを開けると低下して、CO2が注入され、元に戻ることが確認されました。

どうやら、直ったらしい。。。こんな簡単な構造なら中学生でも直せます。ま、今回は原因がCO2センサーだからですが、でも炭酸ガス培養装置の故障の筆頭はこれ。電源は単純なもののようで、壊れたら同格のを探せばいいはず。ガスポンプはThomas Gardner Denver のmodel 5006SE。これは空気を吸って出してるだけで、同じものでなくても良いだろうし。

不思議なのは、このCO2インキュベータ、以前はドアを開けてもCO2の低下があまり起こらず、不思議に思ってました。だけど、今回の修理で、普通にちょっとドア開けただけでCO2が下がり、しばらくしてCO2が注入されて5%に戻るようになりました。これがあたりまえ。一体何だったんだろう?培養には問題はなかったのですが、ひょっとして、今回、ガス経路にシリンジつないで吸気系をお掃除したせいでしょうか?そういえば、CO2センサーのあたりは熱がかかっていて、ここにあるチューブが触ったらぽろぽろになってました。ここから漏れてたのでしょうか。5年前に修理したときに交換してくれなかったようで、ひどいものです。

それにしても、こんな簡単なことに、当時のNuAire代理店は、前回は24万も取り、今回は直そうとせずに、新しいのを買えといったわけね。5年前は、今回と同じく、CO2センサーを入れ替えてあとついでにフィルタを替えただけなのに、作業料として8万取ってます。3分で済むのに。ま、家電の修理でも似たようなものでしょうが、研究機器については研究者にしてみれば人の税金だし、自分の懐が痛むわけでない(大抵は)文句を言わないので、それが通ってるのでしょう。業者もそれで食べてかないといけないし、というのはわかりますが。

そういえば、ESPECのCO2インキュベータでも似たようなことがありました。中のガラスドアのステンレスの蝶番が経年劣化でちぎれてガラスドアが閉まらなくなったとき、対応がないどころか、メールにも返信してくれませんでした。電話して問い合わせてメールしたのに。。。ま、蝶番がねじりきれるまで使うなよ、といいたいのはわかるけど、返事もしないのはないよね、と地元の業者とあきれてたのですが、それでその地元業者さんが同情してくれて、町工場を紹介してもらって直してくれました。さすがにこれは素人には直せません。

たしかに日本のラボではすぐに古いのを捨てて新しいのを買います。だけど、普通の欧米のラボではすごく古い機械がちゃんと整備されて動いてます。企業としては、新しいのを買ってもらわないと経営がなり立たないというのはそうでしょう。だけど税金です。知らないおっさんと桜を見るのに5000万円かける国だから、古いけど動くのを棄てて、新しい炭酸ガス培養装置を買うのは日本経済にとっていいことといわれるかもしれない。だけどそれは大多数の納税者の思うことじゃないでしょう。

日本では大きな研究費があたると、年度ですべて使い切らないといけないので、炭酸ガス培養装置をまず何台も買って並べるものです。特に初年度。そのとき、古いのがあると見栄えが悪くなるし場所取るので、大抵は棄てます。所詮は人のお金。そんなのはバカらしいので私はそんなときこの一台しか買いませんでした。それだけは褒めてください。

そういえば、数年前、PCRにつかうサーマルサイクラーを修理しましたが、今回のはそれよりずっと簡単でした。それぞれ100万くらいする高額な機械です。人のお金で買ったものはだめになるまで丁寧に修理して使わねば。

追記 2020年10月13日
本ブログは終了してますが、いまだにこの記事には多くのアクセスがあり閉めれません。ここの書いたような修理をしてからそろそろ1年になりますが、マシンは何の問題もなく以前よりも快調に動いてます。ボードの交換と同時に配管の付け替えをしたのがよかったのかな。古くなるとこういう熱を出す装置ではプラスティック周りがぽろぽろになります。これがひどくなっても意外とチャンバー内のCO2濃度は保持されるものですが、CO2が漏れて機器のある室内のCO2濃度が上がることはあるようです。この点は前から気になっていて、もちろんCO2の検出メーターは培養室においてますが、日常の光景と化しているのであまり見ることもないし、狭い部屋なので結構なリスクもあったのかもしれません。培養器のような機器はメンテが必須です。そういうことは誰も教えてくれないけど、ラボでは必要な知識です。せめて大学院講義で教えるか。

さらに追記 2023/03/01
いまだ問題なく動いています。上の修理以来、一度もトラブったこともありません。上の修理で良かったようです。それにしてもいまだに世界中から多くの方がこれを見ておられます。ポピュラーなincubatorなので利用者が多く、壊れて困ってる方も多いのでしょう。

さらに追記 2024/09/11
修理してから約5年が経ちましたが、ついに異常が発生。ただ今度は上に書いたCO2センサーではなく、CO2が0のままであがらないという謎。とりあえずCO2センサーを買えるかなとeBayを見たところ、あいにくValtronics のModel 2015SPI-3はなくなってました。他のサイトにも見つからず。唯一、グーグルで検索したときにだけ出てくる、migadeals.comというサイトがあって、ここで買えるように見えましたが、どうもこのサイト、妙。それで詐欺サイトを調べるScamAdviser.comで調べたところ、これのtrustscoreは100点満点のうちで1点、詐欺サイトの可能性が限りなく高い、とのことでした。
今でも、月に数件はこの記事へのアクセスが、世界中からありますが、残念ながら、このCOS2センサーはまともには買えなくなったようです。気をつけましょう。

現在のトラブルはこれとは別で、一見、ハード的にはまともに動いているようです。なぜかCO2だけがあがらない。この修理は難しそうです。

→このCO2インキュベータのトラブル、てっきりフロントパネルボードだろうとeBayで同じものを探したところ、全部で3万くらいで買えることがわかり、購入しました。ところが、その数時間後に、ボードを取り外そうと蓋を開けて、ふと、エアポンプ廻りを見たところ、ポンプにつながる一つのtubingが外れてる・・・ 上に書いたように修理したときにチューブは全部交換したつもりだったのに、なぜかこのチューブだけは昔のもので、さすがに白くぼやぼやになっていて、特に熱のかかるポンプにくっついた部分がぼろぼろで、外れた模様。
 まさかこれかと、新しいシリコンチューブを付け替えたところ、あっさり正常運転。。。まあ、いずれこのボードは壊れるだろうから、そのストックにしておきます。
 それから、前の追記にebayにはもはやCO2センサーは置いてない、と書きましたが、今、再び、2個ペアで出てます。その少し前も見ましたが、まだ、ポツポツ出てくるようです。そのうち、もう一つ買っておこうかな。これは熱がかかるところなので、そのうち絶対壊れる。

2019年11月9日土曜日

睡眠時無呼吸アラーム付きのスマートウォッチ

前に書いた、Alibaba.comから買ったスマートウォッチ、V09Sが来ました。有名な巨大マートですが、ここから買うのは、初めて。こんな梱包テープでがんじがらめになって到着し、さすがと思いつつ開けました。

開けてみると、右のような新品が入っていて(あたりまえか)、電源アダプタと説明書だけの付属品のシンプルな作り。中は良い状態です。
説明書にまず驚きました。既に持っているP11では、日本語がひどく、英語で読んだほうがよくわかりましたが、この説明書、意味が通じるだけでなく、ほぼまとも。一部おかしなところも残ってるので、グーグル翻訳したものを日本人に校正させたような感じですが、よくできてます。こんなのはどうでも良いですが、安心させます。ほんとに睡眠時無呼吸チェック機能も入ってます。






















長くなったので、またそのうち書きます。人柱のつもりで買いましたが、びっくりするくらい高機能で使いやすい。なおアプリはFitupという、この会社が作ったものに変更になってます。アプリの日本語もちゃんとしてます。

2019年10月20日日曜日

光は質量を持たない

若い頃、いくら本を読んでもわからなかったことが、さすがにこれだけ長く研究しているとすんなりわかるようになることがあり、うれしくなります。

顕微鏡での計測、光子を数える測定の仕方を教えていると、やはり光が質量を持たないということくらい説明できないと恥ずかしい、と思って、ほんとに恥ずかしながら、こっそり特殊相対性理論を説明する講義ファイルを探したところ、早稲田・物理の立川先生による2年生の講義ファイルを元に高校生用に書き直されたものが公開されてました。さすがにおそろしくさくさく理解できます。金曜の夜、一仕事終わった後で、読みふけってました。ただ、感動。

4次元の空間を考えて、そこでの2点p, qの距離を世界間隔とよび、これを
spq^2 ≡-c^2(tq-tp)^2+(xq-xp)^2
と定義します。cは光の速度。t、xはそれぞれの点での時間と位置ベクトル。ミンコフスキー時空と呼びます。1項目は距離の次元に揃えるために速さと時間の積になってます。これにはマイナスがついてるのがポイント。光がこの2点間で移動する場合には、世界間隔はゼロにするように、つまり
c^2(tq-tp)^2=(xq-xp)^2
になるようにできてます。こうする意味は下に。

ここで、ちょっとだけ動くとき、この距離をΔrとして、動くものの慣性系(等速で移動する系)をs'とします。s'の座標にいるものはそこにいる、つまり変位はゼロなので、これの世界間隔を考えると、上の式の後半部分がなくなります。これを、ながめている私の慣性系をsとすると、
Δs^2=-c^2(Δt)^2+(Δr)^2=-c^2(Δt')^2
が成り立ちます。世界間隔は系に寄らず一定なので。

これを変形すると、動く速さをvとして
Δt'=Δt(-(1/c^2)(Δrt)^2)^0.5=Δt(1-(v/c)^2)^0.5
となります。ルートを^0.5と書くのはこのブログでは書くにくいから。

これだけ。つまり、慣性系s'で表された動いてる物体に乗ってる人の時間変化は、(v/c)^2の分だけ、見ている私よりも小さいことになります。vが光に比べて遙かに小さいうちはごくわずかなものですが光速の半分で動くと、時間の進み方が(3/4)^0.5=0.866倍になります。この驚くべき世界の仕組みが、こんな簡単な式で現れるのです。感動的です。今まで知らなかった、恥ずかしい限りというのはさておいて。

こういう展開で、運動量について考えをめぐらすと、この運動量は時間が含まれるので、4元運動量と呼ばれるものを考えていき、実にわかりやすい展開で質量は速度が増すほど重くなることが示されます。行列が出てくるので書きませんが。

異なる慣性系から眺めると速さが変わることは我々は日常でよく知ってるわけですが、光だけが例外です。粒子でもあるのに。不思議なことに、ある物体がどれだけ速く移動しても、そこから発する光の速さはその移動速度の影響を受けません。これがマイケルソン・モーレーの驚くべき実験結果。上の世界間隔を使うと、光の場合は慣性系によらずゼロとなり、この現象をとりこめます。

速度が増して光速に達すると質量は無限大になり(4元)運動量も無限になりますが、これは許されないので、ものの速さは光速に達することはできません。質量を持つ限りは。よって、光子は質量を持たないことしかありえません。

基本的な部分は、テイラー展開さえなければ、入試に出したいくらいシンプルな証明。実際、ネットで探すと高校の先生が書かれたものもざらに見つかります。慣性系でない系を扱う一般相対性理論では非リーマン幾何学が出てきて、とても手に負えませんが、特殊相対性理論はそれほど難しい数学は必須な部分ではないので、好きな高校生ならやってるでしょう。この立川先生の説明が素晴らしいのもあるでしょう。それだけに、こんなシンプルな式の展開から、この宇宙の仕組みが解きほぐされるのは、感動以外の何ものでもありません。

それにしても、光は不思議としかいいようがありません。まさに、この世の最大の謎です。前にも書きましたが、札幌で、飛行機に乗り遅れそうになって、空港までタクシーで飛ばしてもらったとき、その運転手と話していたら、なぜか、その頃出たばかりのサイモン・シンがペレルマンの話を書いた「フェルマーの最終定理」の話になったことがあります。彼はそういう話が大好きで、一般書ですがすごくよくそのあたりの本を読んでいて、あれもこれも、と話が膨らみました。彼がぽつりと、自分が死ぬことは辛いとも思わない、だけど、宇宙の果てを見れないことだけは辛い、といったとき、どれほど私が万感のおもいでうなずいたことか。この人は同類だ、と感動した一瞬でした。

2019年10月12日土曜日

ブラウザでpdfを開かないようにする

ブラウザはWaterfoxからBraveに変更することにして、どのPCでもいれました。設定はほぼChromeと同じですが、Chromeは元々使ってなかったので、細かい設定で混乱することがあります。特に、このBrave、設定のエクスポートが見当たりません。

困ったのは、PDFのダウンロードをどこでひらくかの設定。デフォールトがブラウザ内でひらくようになってますが面倒なので、PDF-XChangeで開きたい。メインのPCにはどうにか設定してました。だけど、そのやり方を忘れてて、ノートに入れようとすると四苦八苦しました。

結局わかったのは、設定>その他の設定>プライバシーとセキュリティ>サイトの設定>PDFドキュメントです。これをオンにすればダウンロードして、指定のアプリでpdfを自動的に開くようにできます。まったく何でこんなにわかりにくいのだろう。また他のPCで設定しようとすると忘れてるに違いないので、備忘録でした。

>>2020/05/07
この設定はBraveから消えてます。PDFドキュメントを開いても、指定のアプリで自動的に開くことはできなくなりました。セキュリティでしょうが、めんどくさくなりました。

2019年10月6日日曜日

安いスマートウォッチは結構すごい

スマートウォッチが急速に進化していて、大幅に安くなってます。アマゾンでは2000円台のまであります。心電図がこのあたりの価格の機種ので取れるのが面白そうなので、探して、4000円台のJUSUTEKという、よくある中国の怪しげなお店で出してるのを買ってみました。こちら。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07VY48936/

数千円で買えるスマートウォッチのアマゾンに並んでるものはひどいサイトが多く、おぼつかない日本語で、アマゾンのコメントをみるとほぼサクラ。その度合いをチェックするサクラチェッカーで調べると、堂々、90%のサクラ度合いとなり、危険認定されてます。だけど、だからといって、商品がインチキとは限らず、侮れないのが中国製品。最近では、中国のメーカーは、そういう怪しさを隠さないようになってます。ただ、その価値のないものは残らないわけで、売れてて自信を持ってきてるんでしょう。その割にサクラコメントを仕込むのがかわいいところですが、このあたり、漢方薬の発達と似てる(違う?)。

ともかく、このスマートウォッチは、心電図機能の他に、心拍数、睡眠状態、もちろん歩数、移動距離も出ます。ただ、まず買って躓いたのは接続。これはスマホのブルートゥースでつなぐのではなく、H BANDというアプリで直接つながります。しかもこのH BANDはGoogle Playに入っておらず、しかたないので説明書のQRコードでサイトにアクセスしてようやくアプリを入れることができました。 
入れるときに、承認されてないが大丈夫か、とまで聞いてこられます。大丈夫かといわれてもね。

ネットでいくらみても見つからないので、ついてきたマニュアルをあげておきます。日本語のはかえってわかりにくく不正確なので、英語のにしてます。
このマニュアルでもわかるように、これは意外とちゃんとしたスマートウォッチです。センサーは、ほかのバカ高いスマートウォッチと同じく、加速度センサーと心拍センサー、あとはゼリーをつけて測る心電図のセンサーだけですが、前二つだけの情報から相当な情報を読み取れるようにソフト面での猛烈な改良がされています。機械学習も随分入れてるはず。

特に驚くのは睡眠情報で、この機種では、深い睡眠、浅い眠り、レム睡眠、の時間が出てきます。このレム睡眠がほんとに測れるのかと思ったのですが、これは浅い眠りよりももっと浅い眠りとされるもののようで、レム睡眠というわけではないようです。これは、他機種では単に3段階の一番浅い眠りに位置づけられてます、たぶん。実際、寝たふりをしてても睡眠の継続時であれば、レム睡眠になります。こっそり本読んでてもレム睡眠になるし。

とはいっても、睡眠を分単位で検知していることに代わりはなく、ほぼ正確に計測できてるようです。私は一度寝入ると深い眠りに長く入るようで、女房もつけて比べてみましたが、睡眠時間のパターンが随分違います。彼女は猫に起こされてなかなか長く眠らせてもらえないので、浅い眠り、レム睡眠が頻繁に出てます。私のほうも、眠れてないと思った夜は、なるほど深い眠りの時間が短く、夜中に目を覚ましてた時間はぴったり記録されてます。だけど意外と寝てじゃない、と女房にばれて、今度寝れないと言ったら記録を調べるから、と言われてしまいました。

歩数はスマートウォッチの基本機能ですが、実数よりは少し多めに出てる気もします。が、手を振ったりパソコンをするくらいでは数えられず、結構、正確なのかもしれない。さすがにこれは励みになり、弱ってきてる足腰を鍛えようという気にもなります。田舎に住んでると車でしか移動しないので、どれだけ動かないかがよくわかります。札幌に行ったときは毎日一万歩は歩いてましたが、普段は4000歩もいきません。これはまずい。だから脚が弱るわけね。

心拍数情報もかなり使えます。この前、親しい医者のすすめで24時間心拍数モニタリングをやったときに心拍数が異常に上がってるという指摘がありました。それでスマートウォッチでまめにみると、だいたい、120くらいあたりで(いかにも)フィードバックがかかり下げります。この辺はリアルタイムでわかるので、どういうタイミングで運動すれば安全かわかります。スマホとつながってるときには、心拍が上がりすぎた瞬間を教えてくれる心拍数アラームも設定できます。

面白いのは、ローレンツプロットという散布図。これは、心拍間隔のゆらぎをプロットしたものです。心臓の鼓動の間隔には揺らぎがあり、複雑系の研究者がよくネタにします。これは副交感神経の活動状況を反映するので、ストレスの状況や、心臓機能の異常が反映されます。マニュアルには詳しくは書いてないですが、H Bandでは詳しい解析がでます。心拍数が上がってるときもこの間隔の数値が狭くなりますが、寝たりないときや懸案の多いときはこれの数値が下がり、要注意とでます。もう一つ、HRVという特に心拍数揺らぎの表示機能もあり、これは数値だけが出ます。この意味は、
https://gigazine.net/news/20171014-heart-rate-variability/
に詳しいですが、数値が出るだけなので、図が出て診断の出るローレンツプロットのほうがわかりやすい。

ただ、心電図測定は使えてません。心電図を測るときに使うゼリーのようなのを塗ってのだけど、うまく測れず。それはともかく、これだけの機能が5000円もしないで買えるのは驚異的。このスマートウォッチは、ほぼ、普通のスマホにあるのと同じような加速度センサーに心拍センサーを加えて、その情報を詳しく解析するようにしたものらしい。猛烈な機械学習ですな。なお、同じような値段の機種でも、心拍センサーに加えて酸素飽和度も調べるセンサーをつけたタイプもあるようです。こちらでは睡眠時無呼吸についてもわかるようになってるとか。こちら。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07XF6K36N
ばっちりこちらもサクラ度90%ではありますが。これを女房に買おうかどうしようかとまよってるところ。機能的には信頼しますが、充電が、現在の機種も含めて、ベルトを外して根元のUSB端子を直接さすがややめんどくさい。大体、一日一回はスマホにつないでる使用状態で、大体、もつのは4日くらいかな。

血圧測定というのもできますが、これはほんとなのかなあ。心拍数からみてるだけのような気がしますが、余り変化無いので、みてません。

これら膨大な中国製のスマートウォッチの各機種の違いはその情報の活用のようです。さきのサクラチェッカーで信頼おけるとされたスマートウォッチは、確かにコメントはまともそうですが、基本的な機能ばかりで面白くないものばかり。

このスマートウォッチは、ブルートゥースでなくH Bandというアプリにつなげます。他の同じ値段帯のはそれぞれに似たようなアプリを用意してます。いろんな若者たちが集まってアプリをつくってるのでしょう。他の波動か知りませんが、私のはこの接続がとてもめんどうで、毎回苦労してます。スマホのブルートゥースをオフにして、HBandを立ち上げて、接続のボタンを押して、スマートウォッチを一旦オフにして、入れ直します。それでもP11という機種IDがすんなり出ることはなくて、アプリの接続のボタンを入れたり出たりを繰り返してる必要があります。そのうちに大体はP11がでてきて、それを押すと接続がはじまり、データのロードがはじまります。ただその途中で切れることも頻繁で、データロードが終わるまで、油断できません。ま、車の中などで他に何もできないときにやってるからいいですが。

アップロードしたデータはクラウドに保存され、ずっと記録が残ります(これには、確か接続した初回にやるかと聞かれます。)。この情報を中国で他の目的に使ってるのかもしれませんが、それはいいとして。

接続しづらいのは、スマホ(こちらもファーウェイ、中国製)との相性なのかもしれないですが、ネットを見ると、これは一般的なトラブルの模様。なぜ普通にブルートゥースを使わないのかな?H Bandが怪しげなソフトである事は確定と思いますが、その半端ない機能は魅力的です。なおH Band2というのがGoogle Playにありますが、このスマートウォッチではつながらず。この辺、よくわかりません。何か、スマホの情報を抜き出してるのかもしれない。一応、SMSとリンクすることはできるみたいだけど。ともかく、こういう怪しげなのでもハイテクの部分を楽しめて、スマホのデータの流出防止に自信のある人、または知ったことではない、という人には、格好のおもちゃです。

追記
だけどこのアプリ、HBandはどうもほんとにウイルスに感染してるのかもしれません。これをグーグルドライブにあげるとウイルス検出される始末。トロイの木馬かな。GooglePlayに入れられてないというのは、そういうことなのでしょう。中国のGoogle Playを見ると不思議と入ってますが、ここからインストールがどうやってもできません。これはこういうことを楽しめる人向け。とはいっても、同価格帯の他の機種では難なくつながり、アプリもgoogleplayにあるしブルートゥース接続するようなので、この機種以外ならもっと普通に便利なようです。

2019年8月21日水曜日

緬羊の町

「 一日に8回しか列車の停まらない駅、ストーヴのある待合室、寒々とした小さなロータリー、字が消えて半分も読めなくなってしまった町の案内図、マリーゴールドの花壇とななかまどの並木、人生に疲れ果てた汚れた白い犬、やけに広々とした通り、自衛隊員募集のポスター、三階建ての雑貨デパート、学生服と頭痛薬の看板、小さな旅館が一軒、農業協同組合と林業センターと畜産振興会の建物、風呂屋の煙突が一本だけぽつんと灰色の空に向かって立っている。大通りの先を左に折れ、二筋進んだところに町役場があり、広報課には彼女が座っている。小さな、退屈な町だ。一年の半分近くを雪に覆われている。そして彼女はその町のために公報の原稿を書き続けている。」

はるか昔に買って長らく読んだつもりでいた村上春樹の「カンガルー日和」、なんと、この有名な短編集をまだ読んでませんでした。実家の本棚を物色してたときにこれに気がついて、持ち帰ってスキャン。ピンキリではありますが、ダントツなのは、この「彼女の町と、彼女の緬羊」。彼がのちに希有の長編書きになっていった、その理由がこれを読むとよくわかります。冒頭は、札幌郊外の、沢山の羊が飼われていて、寂れつつある町で、町の広報担当として、日々、町内放送を続ける女性、その町を思い描く僕。

このイメージがまさに彼の奔放な想像力と魅力。こうして書き留めると、ひとつひとつの文は特に何でもない、だけどこうやってもう少し大きく切りだして眺めると、彼ならではの物語作りの才を強く感じます。この出発点と、もう一つ、この中にある、印象的な長めの短編、初めて羊男が登場する「図書館奇譚」とともに、たぶん白昼夢のように、羊をめぐる冒険は生まれたのか。

なにをいまさら半世紀ほど前の話を、といわれそうですが。

2019年7月15日月曜日

サプリの安全性情報

高齢のお袋に謎の症状がでていて、いろいろと点検していると、やはり気になるのはサプリ。怪しいものは飲まないように気をつけてはいても、サプリは濃縮されてるので、思わぬ薬害が出ることがあります。とくにまじめな調査は宣伝もされないので、そのつもりで探さないとなかなか見つかりません。

このところ、この関連でまずみているのはもちろん厚労省の研究所である国立医薬基盤・健康・栄養研究所の、健康食品の安全性・有効情報。
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/indiv.html
ただ、健康食品でサーチしても、一般人がここをみるのはあまりなさそう。またその中身も羅列的で、わかりにくく、これでどれだけ、普通の高齢者が参考にできるものか。ただ、そういう情報のポータルとして一番あてになります。だけど、一般人に広報するつもりもなく、全くのお役所仕事。

他に、日本医師会が平成22年度から29年度までに集めた事例集、健康食品安全情報システム事業の成果報告というのがあります。たぶん、医師会がお金をもらって、健康食品安全情報システム委員会というので審議した内容と思いますが。これはおそらく医師が報告した事例が少なく(一般の医師には関連性に確信が持てるまで調べる余地もなさそうだし)、わずかしかありませんが、その中で、いくつか目をひくものがあります。医師向けで一般用じゃないので、なかなか見つかりませんでした。私のような医学系基礎研究者は医師会には入ってないので。ま、もらえばいいわけですが。

たとえば、うるさいくらい宣伝されてる、シジミ関連のサプリで、シジミ習慣、というのがあります。おそらく血栓を防ぐためにワーファリンを飲んでる56歳の人が、ワーファリンの効きが悪くなり血が固まりやすくなって増量が必要になり、なぜだろうと調べるとシジミ習慣が原因だったらしいということ。これはシジミ習慣のなかにビタミンKの一種が入っていて、何しろ、シジミの成分が猛烈に濃縮されていて高濃度に含まれるので、それをやめてもらったところ、元の安定した状態にもどったとのこと。

これは典型的なサプリの問題で、普通食事でとるよりも遙かに濃縮されてるので、人体実験のようなものです。食品由来ということで安全性検査もあまり長い期間はされないので、問題が出やすい。

サメ軟骨、グルコサミンでは、手足の浮腫、かゆみや肝臓機能障害、がいくつも報告されています。 これらの事例では、やめると直ってるので、ほぼそのせいでしょう。ただ、グルコサミンは有効なのは確かで、量とその他の成分でしょうね。サメ軟骨はやめた方が良いと思うけど。

コエンザイムQの被害は有名で、肝障害を起こしてます。これもやめたら治ってます。やはり、大量にとるので、肝臓が障害を受ける場合は多く、ほかにオルチニン、とあったけど、これはオルニチンの間違い、医師会が間違えるようでは。これで肝障害になった例もあります。ウコン、クルクミンはすっかり有名になってるのでいうまでもないところ。

意外なものでは、黒酢の濃縮粉末というのがありました。これは胃がおかしくなったようで、胃粘膜の病変になっていて明らかにクロスによる胃炎だとか。こんなの濃縮するなよと思いますが。

やめることで直った結果、特定できた例が多いですが、中にはあまりに多くをとっていたために、やめてもなおっておらず、どれが原因なのかわからない、だけど医師は疑ってるという例もあります。ある人は、ロイヤルゼリー、グルコサミン、ビタミンB類、穀物麹、ごま酢、桑の実、コエンザイムQ、カルシウム、ウナギ肝臓、ビタミン類、ととっていて、ともかく取り過ぎで、肝臓を痛めて肝不全になりました。これでは、元に戻れません。

珍しいものでは、indigo naturalis, といういかにも青そうな名前のものを主成分とする、青黛というものがあるそうです。昔から潰瘍性大腸炎の治療に漢方では使われていて、健康食品でもでてるとか。これは肺動脈性高血圧を引き起こすので、これは厚労省から注意喚起が出ています。ただ、この医師会の調査のでは、結腸炎を起こしてるらしい。これは回復されてないとか。

過剰のサプリは死亡率を上げるという報告が相次いで出ています。だけど効くサプリもあるのは確か。グルコサミンは関節内に分泌される細胞外マトリクスを増やすことで骨のスムーズな動きを確保するので痛みに効くようだし。だけど、基本的に、メーカーにとって、もっとも大事なことは売り上げなので、必要以上に多く摂らせがちです。

メーカーのいう一日あたりの量は、厳密な検討の結果決められる薬と違って、サプリの売り上げに都合のいい目安の場合が多い感じがします。効果があると感じる最小限にしたほうが無難。サプリなら、文字通り、足りないから飲むものなので、飲んですぐに効き目が出るはず。でないのなら、さっさとやめるべきです。とくに、注意書きを小さな字で難しく書いてあるサプリはやめたほうがいい。というのは、サプリに限らずどの商品でも同じですが。

2019年6月15日土曜日

mimas もっと続き

リーダーのソフト、BYOSで、aura oneのコレクションのようなフォルダ作成ができればもっと良いのにといいましたが、これは迂闊。aura oneとは違って、アンドロイドPCなので、フォルダを作ればいいだけのことでした。あっさり、こんな感じで、分類した本棚ができました。
見やすいので、以前読みかけていた本も、大きいものを入れているうちに、段々増えて、本棚から探すのが面倒になってきて、結局、このやり方に落ち着いた次第。やはり本棚は一ページで表示したい、それでaura oneでは各カテゴリーの他に村上春樹だけを別フォルダにしてましたが、aura oneで十分読んだので、こちらに持ってくる必要もないかな。代わりに、長いこと忘れていたサルトルを再び読み出していて、だけで、これを評論フォルダに入れるのもなあと、単独フォルダにしました。また、現存在分析から知った霜山徳爾の本が多いので、この系統を独立。フォルダはまだ、半画面くらいなので、あと5フォルダくらい作れます。

mimasで本の読み方も大分変わった気がします。これでBYOSへの不満は、あとはブックマークというか、しおり機能だけ。何かついてるのだけど、使い方がわからない。マニュアルはないものか。<<追記ですが、これはaura oneと同じで、右上端を触るだけでした。

ところでversion upで両開きができるようになってました。右上の方の二重何とかと書いてあるのがそれです。中国語で両開きの意味なのかな。
 

ただ、右開きと左開きの設定ができないみたい。いずれにしても、10.3インチで両開きで読むのはかなり厳しいので、こんなのやる人いないと思いますが。どうしてもやりたい人はChainLPで2画面設定したほうが、左右の設定も自由にできるのでよさそう。他に、電子本用に文字位置や余白などもかなり細かくカスタマイズできるようにはなってます。無縁ですが。アンドロイドリーダーは、カスタマイズの方向に進んでるのかな。電子本はともかく、これは、私のような読み方をする人間にはうれしい。

2019年6月7日金曜日

Likebook mimas続き

タブレットは買うとなんとなくがっかりすることが多い気がします。でもlikebook mimasは買ってよかったと思えるはじめてのタブレット。自炊した大型本のリーダーとして買ったので、他は全く期待してなかったからでもありますが。

いろんなちょっとしたことが新鮮。たとえば、これにはUSB miniBでなくtype-Cがついてますが、これで随分便利になりました。ファイルの転送が5~10倍くらい速くなって、刺すときに上下を確認せずにすみます。たいしたことではないけど、こういうのは使い勝手に影響します。

8コアのCPUがタブレットに入るとバッテリーの消費が早いのではと思いましたが、あんまりそうでもありません。主目的は読書で、あと、読んでる合間にメールチェックするくらいだからでしょうが、eLinkなので液晶のような強い照明が要らないからかな。描画速度はとにかくeIink自体が遅いので早いとは言えませんが、それでもアプリの動作自体には、遅い感はないかな。アンドロイドの起動自体は遅いですが。

mimasにもGooglePlayでいろんなアプリを入れることができて、特に問題なく使えます。VPNでメインのPCにつなぐようにとF5 accessとMicrosoft Remote Desktopも入れて、メインのPCにつながるようにしてます。リモートデスクトップの操作性は、もちろんノートPCに比べれば遙かに悪いですが、でもファイルを開いて調べたリができないのとできるのとでは大きな違い。

そうこうしてるうちにアンドロイドOSのupdateが配信され、かなりメジャーなものだったみたいで、大分変わりました。BYOSもちょっと改良されたかな。妙な日本語は消えました。代わりに英語のままというページもありますが、そのほうがまし。本棚の中に、分類するフォルダーを作る機能ができてればいうことなしですが、まだかな。このアプリは電子本リーダーとして相当シンプルですが、その分、さくさく読めます。フォーマットがePubである限りは。

ファイルはChainLPで、displayの解像度とされてる画素数1872x1404にして、詳細設定の中の画像はJPEGでなく、PNGの4bitで出してます。それで、普通の厚さの単行本で40Mくらいかな。ボールド化したほうが良いかは本の中身によります。なぜか、AuraOneほどにはボールド化は必須でもない印象。なお、pdfもそのまま開けることができ画像もいいですが、ページ送りがあまりに遅く、これで読む人はいないでしょう。とはいえ、pdfもChainLPで必要なサイズにトリムして、画像も4bitにすればePubと同じくらいに速くなるのかもしれません。


追記
もう一つ、このupgradeで特筆すべきは、それぞれのアプリごとに、様々なモードのカスタマイズができるようになったこと。特に、A2モード、高速リフレッシュモードができるようになったことはeLink アンドロイドとして大きな改善です。これは、ブラウザではeLinkのもっさり感をかなり改善してくれます。その代わり、画質が落ちるのはトレードオフ、だけど、ブラウザもほぼ文字情報なので実は問題なく、この設定をデフォールトにしました。
なお、設定は、アプリの画面で、各アプリアイコンを長押しして出てくる画面でできます。他にも明るさ調整、画素数、コントラストまでそれぞれのアプリでカスタマイズできます。カスタマイズの幅が大幅に広がり、相当な優れものになりました。
また、microSDカードを入れました。これは128Gまで対応してるらしい。だけど、以前、Kobo H2Oで使っていたものをフォーマットして入れても認識されず、壊れてたようなので、とりあえず32Gのを刺したところ、問題なく認識されました。ただこれに本を入れてBYOSで認識させるには、カードの中にBooksという名前をつけたフォルダを作って、この中に入れる必要があります。ちょっと手間取ってしまいましたが、こんなのどこかに書いてあるのかなあ。

2019年6月2日日曜日

10.3インチ電子本リーダー、迷った末、mimasに

長らく、Kobo Aura Oneよりも大きな電子本リーダーを待ち望んでましたが、前にも書いた、Likebookのmimasというのがかなり評判が良い。10.3インチと、ちょっと大きすぎる感もあって、それに5万5千円くらいというお値段がどうなのというのもあり、かなり迷ってましたが、結局、買ってしまいました。

購入ルートも迷うところでした。日本の代理店のようなところか、AliExpress、アマゾン、の3択でした。最初はAliExpressが465ドルくらいの値段をつけてたので、買おうとしたら、ちょっとの隙になくなってしまいました。だけどほんの一時的だったようで、今見たら在庫も戻り、さらに下がって445ドルになってます。。。 ともかく、買ったのはアマゾンでLIKEBOOK EBOOK READERというところからで、Likebook本社なのか、単に紛らわしい名前をつけてるだけなのか知りませんが、中国からの直送。

購入時点で謎の2%割引というのが適応されて、到着は1週間くらいだったかな、無事に到着。だけど、税関で1200円取られて、おそらくそのときに結構乱暴に開封されたようで、袋は破れてました。他は問題なしでしたが。これなら日本の代理店のようなところとほぼ同じ値段。だけど、こういうところは使いたくなかったのでいいですが、それよりちょっと待ってAliexpressから買ったほうがよかったかな。ともかく、本体と、保護ケース、ペン、それと透明な保護シートが二枚ついてきました。保護シートはペン用ですが、ちょっとしょぼいので使いません。だけど、保護ケースはしっかりして見た目も渋く、なかなかいい。ちょっと見にくいけど、こんな感じ。閉めるとオフになります。横に置いてるのはAura Oneを横置きしたものです。



電源を入れると、まずは言語をデフォールトの中国語から日本語に設定。どこにも説明がないので戸惑いましたが、アンドロイドタブレットなので、使えるように設定する必要があります。それで、設定のところを変えて、GooglePlayを使えるようにして、あとはGoogle日本語変換、ブラウザとして軽いViaを入れました。

大きな電子リーダーを買ったつもりでしたが、想定外にアンドロイドタブレットとしての機能がよくて、ならばと、Gmailや学習中のPythonなどのプログラミング言語も入れました。白黒だけど、eLinkだけあって目が疲れず、大きいし、タブレットとしてもかなりいい。コマンドラインなんか、色要らないし。考えてみたら、カラーが必要なことってあまりないのですね。女房がのぞき込んで、私の最初のPCとなった白黒のマックみたいねといってました。そういえばいつからカラーになったのだったかな。

バックライトは2色できます。デフォールトではこれを切り替えて使うようになってますが、サードパーティからの2色ライトを混合する双色混合なんとかいうのが、これもデフォールトでアプリサイトからダウンロードできるようになってるので、インストールして、2色を適当な割合で混ぜて良い感じ。

本来の目的の電子リーダーは、BYOSというアプリがデフォールトで、他のGoogleplayにあるリーダー、Moon+や、PockeBook等も入れてみましたが、BYOSがページめくりの早さ、無駄な余白の無さなどで、ベストでした。唯一、分類機能がないのが難点で、本が増えてくるとどうしたものかと思いますが。ともかく、恒例で、これまでのリーダーと比較してみました。

 左から、Mimas、Kobo Aura One, Kobo Aura H2O、Kindle Paperwhiteです。Aura oneと比べてそれほど大きくなるものでもないだろうと思ってて、これが迷ってた最大の理由でしたが、実際に表示面積を比較すると、かなりの差があります。なお、eLinkとしては、Aura H2Oが一番抜けがよくて、なぜでしょう。

Aura Oneではカフカ全集の日記のような2段組の本は、老眼にさすがに厳しいので、半分サイズにして横にしてますが、並べると事実上、倍近く表示領域に違いがあるようにみえます。

雑誌などもこれに入れるととても読みやすい。特に老眼にとっては。村上春樹が父親について書いたのが文芸春秋に出てたので、この雑誌を20年ぶりくらいに買いましたが、mimasに入れるとすごく読みやすくなり、高齢者の味方です。(なお、この文章はちっとも面白くなかった。なぜだろう。)

他に、ソニーのDP1と、最初期のKindle、Pocketbookも買いましたが、これらは使用期間が短く、すぐに次のに置き換わりました。特にソニーのDP1はがっかりで、13インチと大きすぎるのとバックライトがないのが致命的。ページめくりもpdf限定のせいか、遅すぎて、軽いのを人に見せて驚かせるくらいしか使い道がありません。譜面として使うくらいかな。

BYOSでは、pdfファイルでも使えなくはないです。この辺はさすがはオクタコア、強力。だけど、デフォールトはePubです。このほうが小さいし高速になるので、結局、ChianLPを使って、余白をトリムして、絵があるかによって2~4bitくらいに落とすことと、本文ボールド化(写真があるとこれはだめ)をするかどうかを選んで、後はヒストグラムでレベル補正してePubに変換して入れてます。ページリフレッシュは細かく選択できますが、neverを選択してます。

「急速」というモードもあり、たぶん、これはpdfを入れたときに画像のビット数を2ビットまで落とすことでページ送りを高速にしてるのだろうとおもいますが、元々、低いビット数でしか入れてないので、私の使い方にはあまり関係ないです。電子リーダーの難点であるページのパラパラ送りは、さすがに本にかなうはずもないですが、それでも結構高速になりました。aura oneとは比べものになりません。普通に本を読むには全く問題なし。

これくらいの面積サイズだと 教科書でも使えます。重たい解剖学の教科書もこんな感じ。
これが自炊本で使えるレベルになったのは初めてかもしれない。

全く興味なかったペンですが、意外とこれが使えるレベルで、ノート、というのを使うと、ほんとにノートに書くような感じでメモれます。ま、使いませんが。

この値段は、eLinkのアンドロイドタブレットとして考えると、十分納得できるものでした。電子本リーダーとしても素晴らしい。普通サイズの本はこれまで同様にAura Oneで読みますが、2段本や大型本、雑誌はmimasという使い分けができるようになりました。

追記 2020/07
mimasはそれなりに使えてます。重いので、持ち歩くことはあまりないけど。Kobo aura one コミックeditionが一杯になってきたので、次の端末を探したところ、やはりkobo formaしかないという結論になり、購入しました。次のブログに書いてます。
https://ketupa-peeri.blogspot.com/2020/07/kobo-forma.html

2019年5月27日月曜日

Tab Mix Plus

FireFoxがQuantumになってTab Mix Plusが使えなくなって以来、ブラウザはWaterFoxという、英国のAlex Kontosが興した会社のFireFoxの64bit nativeのを使ってます。何にも問題ないですが、女房のPCにもこれを入れようとしたら、Tab Mix plusがFirefoxのadd-onサイトから消えてました。おそらく、FireFoxでは使えなくなったからでしょう。ま、そうですよね。

代わりに、現在のFireFoxでも使えるTab Mixなんとかいうのが入ってますが、これはダメ、設定をAbout.configで別に行う必要があると書いてありますが、こうやっても機能せず、plusの大事な機能がつかえません。

ただ、それは単にFireFoxが載せてないだけで、どこかにあるだろうと調べてみると、やはりありました。https://bitbucket.org/onemen/tabmixplus/downloads/?tab=downloads
からダウンロードできます。これをadd-onからファイルとしてインストールするとWaterFoxにTab mix plusを入れることができました。これに、設定したファイルをインポートして、できあがり。

 もっとも、Tab mix plusのupdateは自分でここに行ってマニュアルでインストールする必要があります。だけど、してなくても現実的にどれくらいのリスクがあるのかしりませんが。ともかく、めでたし。



 左下の、ゴミ袋のようにみえる黒いかたまりは眠るちびくろ。それを優しく見守るお姉さん猫、な訳がない。数秒後には争いが始まりました。

2019年5月25日土曜日

聖ジュネ

斧が私の首を切るずっと前に、
わたしのなかで死んだ朗らかな子供

実家に帰ったときに持ち帰ってきた新潮文庫の「聖ジュネ」、このサルトルの本、実に懐かしい。高校生の頃、懸命に読んでたものです。相当ハードで、ほんとに懸命に読んでました。最初から読めば実はそこまで難渋なものでもないのですが、適当に開いて途中から読むと、ほぼ意味がつかめない。

だけど、これは救いでもありました。なぜだかわからないけど、それは、たとえば、この聖ジュネの第一章の章題、実はこれは、ジャン・ジュネの書いた詩の一節。訳も素晴らしい。何かあると、よくこの言葉を思いうかべてました。これがこの本、ジャン・ジュネの評伝の主題です。この長大な本では、繰り返し、この解題が行われます。だから、高校生でも読めたのかもしれない。

「幼年時代のある思い出に関してある事件が彼の身に起きて、この思い出は神聖なものになった。 若年に宗教の儀式に似たドラマが演じられ、彼はそのドラマの祭司となった。つまり彼は楽園を識ったが、それを見失った。子供であったが、幼年時代から追放されたのである。」

ジャン・ジュネは若い頃、札付きの犯罪者で、何度も投獄され、だけど悔い改めるどころか、脱走を繰り返し、犯罪を賞賛し、ついには終身刑が科せられようとしていたころに(フランスでは10回有罪になると無期懲役になるという制度があるそうで)、サルトルやコクトーらの請願により恩赦されました。彼はちっとも喜びませんでしたが。

不幸な幼年時代、何が彼を犯罪に向かわせたのか、なぜ彼は描いたのか、なぜ彼は悔いることなく犯罪を繰り返し、それを称えたのか、この本のmotivationはそこにあります。だけどジャン・ジュネの小説や戯曲のほうは私にはちっとも面白くなく、数ページ以上読めたこともありません。詩は、冒頭の句は素晴らしいけど、訳にも寄るのでしょうが、あまり感じるものはありません。ただこれは単に私には縁遠いというだけで、仏文科の卒業論文には数多く、彼を対象にしたものがあるに違いありません。この「聖ジュネ」はその頂点でしょう。

彼を理解しようとするサルトルの試みは素晴らしく感動的なほど。そして、その行為は不思議な魅力に満ちています。今でも、改めてそう思うくらい。読むほうに進歩がなさすぎだろう、というのはさておき。

ただ、これを読んだジャン・ジュネはショックを受け、その後ほとんど書けなくなります。それはそうだろう。ここまで分析され、解決されると、これ以上何を生む必要があるのか。研究と同じようなものです。彼を、評伝、分析対象とするには余りにも早かった。知性とは残酷なものです。

2019年5月9日木曜日

日焼け止め、紫外線吸収剤は安全なのか

紫外線が強い季節になりました。そんな頃にタイムリーな、この論文、
Effect of Sunscreen Application Under Maximal Use Conditions on Plasma Concentration of Sunscreen Active Ingredients

前から気になっていましたが、最近では日焼け止めを積極的に塗ることが推奨されています。オゾン層が薄くなったせいなのか、紫外線は昔よりは強くなりました。だけど、日焼け止めをメーカーの推奨のように塗ると、相当な量になります。日焼け止めには相当いろんな成分が入っていますが、そんなに安全なものなのかなと思って、つけたことはありません。が、女房はまじめに塗ってます。いいのかなと気になってはいても、たいした根拠もないし、塗らないとシミが増えるとか皮膚ガンになってもいいのね、とか絡まれても困るし。

この論文では一般的な日焼け止めの成分であるavobenzoneを例にして、どれくらい血中に取り込まれるかを調べてます。これは血中濃度が0.5ng/mLよりも低ければ生物学的影響はないとFDAはしていますが、言い換えれば、それ以上だと、発がん性や催奇性などの毒性検査が必要になるとされています。24人で調べたところ、血中での最高値が4ng/mLで、安全とされるレベルを一桁超えてます。

avobenzoneは紫外線を吸収して分解されることで、皮膚が紫外線に曝されることを防ぎます。だけど、同時に、構造からわかるように、皮膚に浸透して細胞内に入り、血中まで容易に到達するでしょう。この手の紫外線吸収剤はどれも似た性質があるようで、Oxybenzoneはもちろんですが、OctinoxateやHomosalateも、名前からなかなかぴんときませんが、構造を見ると同じような浸透性を持つだろうことくらいは、化学者ではない私でもわかります。

たぶん、紫外線吸収剤は芳香環を使うのが簡単なので、水に溶けにくく油に溶けやすい化合物が使われているのでしょう。いずれも、もちろんそんなに毒性が高いものではないですが、日焼け止めクリームで使う量は大量です。飲み薬は厳しく摂取量が管理されてますが、塗り薬はほぼ放置されてます。紫外線吸収剤は取り込まれるとどれくらいの早さで代謝されて放出されるものなのか。だけど、その前には血中に入って全身を回って肝臓に入らねばなりません。

おそらく紫外線散乱剤である二酸化チタンや酸化亜鉛のナノパーティクルの方がまだ安全でしょう。これらナノパーティクルの安全性がどうかわからないとは言われていますが、ただ、これらが蓄積することはあんまりないかな?少なくとも上に書いた吸収剤よりは体内吸収がかなり低そう。

皮膚ガンのリスクか、日焼け止め薬の毒性か、どちらを取るか。一番安全なのは中東のように布をかぶることだとは思います。宗教は人が生きるための知恵でした。

2019年4月29日月曜日

デカフェのコーヒーはどうやって作られているか

ポスドクしていたモントリオールやボストンではデカフェのコーヒーはよく飲まれていて、茶店やフードコートでも普通に選択できました。ただ、どうやってコーヒーからカフェインだけを除けるんだろうと疑問に思って聞いたところ、トルエンだよ、といわれて、だから絶対飲まない人がいるんだ、と言われました。トルエンはかなり有害なので、まさかとは思ってましたが、じゃあ、なんだろうと調べたら、液化炭酸ガスで除いてる、という話をどこかで読んで、ならば大丈夫かとも思って、時々飲んだことあります。今も、ラボにはおいてあります。でもコーヒーに比べてあまりうまいものではないですが。

Gigazineに
デカフェのコーヒーはどのように作られているのか?

という記事が出ていたので、興味津々で読みました。これは

How Is Decaf Coffee Made?

という記事の概要翻訳でした。 これによると、当初はベンゼン(ベンジンかと思ったが、ほんとにbenzeneらしい)で抽出していたが、発がん物質なので、今ではジクロロメタンなどに切り替えられてる、と・・・

私の聞いてたトルエンというのがベンゼンの間違いだったことはわかりますが、ジクロロメタン??こちらも有害性では負けません。妙だなと元記事を読むと、ジクロロメタンと酢酸エチルで抽出しており、ジクロロメタンは毒性があり神経にダメージを与えるという懸念があって、FDAが調べたところ、残留する濃度では健康への被害は出ないとされたとのこと。

ちゃんと訳せよ、と思いますが。元記事では、もう一つの方法、私が理解していた液化炭酸ガスを使う方法もあることが書かれていて、Gigagineでも訳されてますが、元記事ではもう一言、こちらもwidely usedと書いてあります。

あと一つ、元記事を読んでも理解できない謎な方法が書いてあります。これはわからないのですが、ともかく、元記事にある一番大事なメッセージは、今飲まれているデカフェがどのようにして作られたものかは消費者は知る事ができない、ということ、これがGigagineでは書かれてない。スポンサーかもしれないメーカーへの忖度なのかな。

ここでConsumer Reportsというが引かれていて、読んでみました。どうやら、これがほんとの元記事らしい。ここをリンクするだけでいいだろうがと思いましたが。ここではちょっとだけ詳しく、この謎の方法の意味も、水で抽出する方法で、かなり手間がかかるということ、酢酸エチルとジクロロメタンを使う方法も用いられていることがわかったくらいで、大体同じ。

ともかくやはり、デカフェは碌でもないものの可能性があるかな。液化炭酸ガスは、単なる炭酸ガスなので成分としては安全で、うちのラボでは電子顕微鏡試料の調製に使ってますが、これを大量にやろうとすると、高圧で行う必要があるので、コストがかかりそう。やるかな?危険だし。

ジクロロメタンが使われてたにしても、抽出に使われた薬品の残留物の量は基準にあってはいるのでしょうが、手法はなんで公開されてないの?いずれにしてもデカフェはやめた方が良さそう。ラボにおいてるのも棄てることにしよう。

2019年4月26日金曜日

レッツノートCF-J10をWindows10にする

今はノートはVaioを使ってますが、2-3年前まで、レッツノートのCF-J10をつかってました。ちいさくてとても使いやすく頑丈でよいサブノートでした。ただこれ、Windows10が出たときに、パナソニックは早々に更新対象にはならないことを宣言。新しいVaioに惹かれたせいもあるというのはさておき、さっさとVaioに乗り換えたので、CF-J10は棚の上で埃をかぶる(比喩)ことになってました。

だけど、もう一台、小さめのPCがほしくなって、新しいPCを買う気もせず、ふとこれを思い出し、そもそもほんとにWindows10がいれられないものかという気になりました。今なら、誰か人柱が出ているはず。CF-J10はとっても良い機種で、Windows7でも、今でも操作性は見劣りしません。ただ、今の最新Windows7に更新すると、再起動を繰り返してしまい、なぜか使えなくなってます。やむなく、セーフモードで過去の状態を復元させて、Windows10のインストールを試みることにしました。

当時、実際にどこまでやったのか記憶にないのですが、性分からして、 とにかく新しいOSを入れようとはしたはず。だけど完了できなくて、なるほどダメなのね、とやめていたのでしょう。WindowsUpdateを開くとWindows10への更新がでていました。そこで進めたところ、
Intel(R) Dynamic Power Performance Management
がWindows10とぶつかるのでアンインストールされないかぎり進めない、という表示。これがどうやってもできません。

そこでネットを調べたところ、この方
がレッツノートCF-S9でもWindows10が入れられました、という記事を書いておられました。あきらかに素人ではないお方。インストールの問題は全く同じで、上記のインテルのドライバが邪魔。この方は、それをWIndows8への更新に際してパナが出したドライバetm_6071084.exe をあてることで、同じように解決できることを見つけられてます。

S9でできたのならJ10でもできるだろうと、そこで素直に従い、さらに再起動後にもうワンステップの謎の操作を書いてあるとおりにやったところ、あっさりWindows10への更新がはじまりました。正常に何度も再起動を繰り返して、しばらくすると、なんのことなく、今では見慣れたWindows10の画面が出てきました。こんなやり方、素人には思いつきもしません。

Windows10の起動に際して認証も何もなかったので、おそらく無料で更新できた当時に更新のライセンスだけ取っていたようです。褒めてあげよう。

このWindows10になったCF-J10、まったく何の問題もありません。もちろん、前のソフトもそのまま使えます。Windows7よりも速くなって、しかも、OSがコンパクトになったせいか、ファイル整理のやり方が変わったのか、空きが増えました。とっても快適。 ディスプレイサイズが小さいこととバッテリーが長時間は持たなくなってること以外、Vaioと比べて何も見劣りしませんし、むしろさくさく度は上。

それにしても、なぜにパナソニックはこれをWindows10更新の適応外にしたのでしょう。新しいのを買ってくれ、てこと?でも、今どき、同じ機種にアップグレードする人の方が少ないだろうに。とくにレッツノートは高いし。

もう、長らくいわれているように、そろそろパソコンは機能的に飽和してきました。CF-J10は震災直後に買ったもので、8年前でしたが、すでにハード的にはほぼ十分なものになってきてるということでしょう。このときにすでにSSDにしていたのも正解でした。

追記
上のようにWIndos10のCF-J10にしてから5ヶ月が経ちますが、家で女房の愛用機になってます。一つだけ気になったのは温度。CPUの温度は常に80度越で、いつもファンが回っているため、膝の上だと夏は暑い。やはりWindos10はCPUには負荷をかけるのかな。だからパナはこれを入れられないようにしたとか?
そこで、電源やシステムの詳細設定で、なるべく熱を出さないように、つまりパフォーマンスを落として節電モードで使ってます。それでも速さは全然ストレスなし。SSDにしてたせいもあって。それでもCPUは80度をあまりきらないですが、新しいのを買う気もしないので、壊れるまで使いつぶす予定です。

しばらくして追記2020/06/10
このいつもCPUに負荷がかかってるようだという問題は、少なくとも2020MayのOS更新でなくなりました。今ではブラウザを見てるだけでは数% くらいしかCPUを使ってません。この辺は、次のブログサイトに書いてます。
https://ketupa-peeri.blogspot.com/2020/05/let-note-cf-j10windows10.html


2019年4月12日金曜日

訪問者

誰だろう
明け方からはげしい雪なのに
誰かが私の名を呼んでいる


平林敏彦の最新の詩「訪問者」から冒頭の部分ですが、まさか、4月中旬にその通りになるとは。いつ以来でしょうか。最近では記憶にありません。冬タイヤから夏タイヤに履き替えてしばらくたつ
というのに。

こんな引用の仕方になってしまってごめんなさい。。。まったく、なんという詩人なんだろう。




何の関係もないけど、昔のファイルから出てきました。

2019年3月27日水曜日

再び、研究棟の一室で

このNHKの番組、「そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死」、見るのは3度目。同じ番組を2度見するのは好きじゃなく、つけたらたまたま放映されてたわけですが、それでもチャネルを替えることなく、最後まで見てしまいました。

前も書いた、この事件。憲法を専攻して研究を続けて、非常勤講師などで糊口をしのいできた一人の男性が、九大の建て壊しになる文系キャンパスの一室に火を放って自らの命に終止符を打ちました。番組で取り上げたのは、彼が通っていた整骨院とラーメン屋の話。それと友達と先輩の話。

こういう人生は無理だ、そう言っても、その言葉は、手から砂がすり落ちるようです。

だけど、やっぱり言わないといけない。研究者の人生が難しいとしたら、それはあまりに自由だからでしょう。サラリーマンと違って、研究者は日々の研究の中で選択を迫られます。これを、選べる、と思うか、選ばないといけない、と思うか。わずかな選択のミスが指数関数的に人生の大きな道筋を変えます。それはプレッシャーなのか、自由なのか。

すくなくとも、そこで一人で悩む必要はないのです。誰もが違う世界に生きているわけで、ほかの人生も周りが教えてあげることはできる。もちろん大学でも、あの番組で、言葉をかけなくて後悔している、と語ってくれた優しいラーメン店主でもよかった。本来、学問は、世界を切り開くためのもの。段々狭くなる世界に住むためのものではないんだよ、と。誰か、言ってくれなかったものか。

2019年3月23日土曜日

Aura Oneの終了

しばらくThe digital Readerを見てなかったら、2ヶ月前にKOBOはAura Oneを終了するという記事がでてました。まったく知らなかった。
https://the-digital-reader.com/2019/01/28/the-kobo-one-is-discontinued/

まだ楽天では売られてますが、ただ、現在の私の本、32GメモリのコミックEditionは、噂の通りに早くに販売終了になり、現在、8Gのだけが残っています。これも在庫もあまりないようで、これがなくなったら、日本でも終了なのかな。アマゾンでは既に中古品がほぼ新品と同じ値段で売られてます。

KOBOではKobo Formaをその後継機にしてます。だけどこんなの、誰が買うんだ、と、余計なお世話ですが。他のメーカーからも7.8インチのはいくつか出てきたので、これから、本を読む目的でe-ink readerを買うには、他社ので試行錯誤することになりそうです。

今出ている機種のなかだと、Likebook Mars が同じサイズでmicroSDカードをつければ128Gまで増設できて、CPUのスペックも、そもそもMarsはAndroidOSなので比較にならないようで(Formaのは不明)、Formaのような無駄な横幅や回転機能がない分、ずっと良さそう。50gくらい重いですが、カバーつけるから、誤差範囲。とくに128Gストレージを追加できるのは大きい。これはaura H2Oと同じだ。また、2階調モードというのもあり、これだとページめくりが高速になるのかもしれません。このハード、かなりそそられます。私には関係ないですが、Kindle本、Kobo本も読めるようになっていて、すべてをカバーしようという野心的。

と書いてて気がつきましたが、つまり、いまではaura Oneの優位性はすでに無く、だから市場から消える訳ね。

もう少し大きい方がいい場合もありますが、7.8インチというサイズが、ハードの共通項としては確かにベストかもしれません。文庫本より少し大きく、単行本の印刷画面のサイズとほぼ同じ。バックライトももちろんついててCarta E-inkで画素数も300dpiと、これ以上望みません。ただ、aura Oneはcarta E-inkはKobo aura H2Oに比べるとdisplayのコントラストがなぜか落ちていて、並べると見劣りするものでしたが、H2Oはなにぶん小さいし。ネットの画像や話を見る限りでは、Likebook MarsのCarta e-inkは、H2Oの画像クオリティがあるようです。

Aura Oneは2016年8月の販売開始だったそうで、わずか2年半ちょいで終了ですか。私がこれだけ入れ込んでるので、直ぐになくなるに違いないと思ったら、案の定。

ただ、こういうハードは、たぶん、商売にならないような気がします。e-bookを買い続けてくれれば良いでしょうが、今の電子本は質の点で、紙に比べてなにかと見劣りします。マンガならいいのかもしれませんが。結局、aura oneをネットにつないだのは、買ったときと、それからしばらくあとの2回だけ。ふとつないでみたらupgradeされてしまい、画面がうっとうしくなり、元に戻せなくなりました。以来、version upされてますが、絶対につながないようにしてます。それくらい忌諱したい。

時々まとめて本を買ってますが、即、裁断して、ix500でスキャンして、ChainLPでcbzに変換してAura oneに入れてます。だけど、こんなことやってる人はまだそんなに多くないのかな。うちのマンションのゴミ捨て場に裁断された本を出してるのは私ら以外に見たことないし。そもそも、皆さんほんとに本読んでないし。そんな人生、つまらなくないかとは思いますが、これもまったく余計なお世話。

私のAura Oneには900冊くらい入ってますが、まだ空きがあり、あと100冊くらいは入れられます。書棚に残ってる本を入れたら直ぐに埋まってしまいますが、残りは大型本なので、つぶすかどうか悩ましい。ともかくAura Oneには新しい本ばかり入れてるので、次の新しいe-ink リーダーを待つ時間はありそうです。

2019年3月22日金曜日

VPNで勝手なキーリピートが増えた件

外にいるときはVPNでラボのPCにアクセスして、そこでソフトを動かして、大学にいつもいる振りをしてますが、最近、打ったキーが勝手にリピートするようになりました。つまり、aとうつと、aaaaaaになり、日本語では、そうだ、のつもりが、そうだあああああああああ、と絶叫調になったり、最悪なのは、backspaceで一文字消したつもりが、前に打った文章全部を消してしまったりと、なんだか妙というより、落ち着いて打てなくなりました。

システム担当に聞きましたが、ネットワークの混雑のせいかもしれないので、対症療法的にキーボードの設定を変えてみたら、とsuggestion。やってみたところ、この設定に反応しません。

どうも妙で、何か頭の中で引っかかるところがあり、ネットで調べているうちに、以前、「Windowsでキーボードの速度の限界を突破する」という@ka_さんの記事を参考にして、レジストリをいじっていたことを思い出しました。

この方の通りに、レジストリのControlPanel>Accessibility>Keyboard Responseの中のAutoRepeatDelayをデフォールトが1000のところを170に、AutoRepeatRateを500のところを9に、あとBounceTimeやFlagsも変えてました。何と素直なこと。

そのときはこれでキーのレスポンスが最速になったと 喜んでました。だけど、どうもこれが、現在の学内ネットワークの状況にあわなくなってるのかな。昨年度に比べて設備も人も大幅に増えた大学なので、ネットワークが追いついてない、ということなのか。

そこのところは仕方ないので、こちらの設定変更でと、試行錯誤の末、AutoRepeatDelayは250、AutoRepeatRateは50に変更。ややもたつき気味ですが、こちらも年とってレスポンスが悪くなってるのでちょうどいいかな、と遅くして様子見です。

→と思ったけど、まだそこまでもたついてないので、 AutoRepeatRateは30に変更。今のところ、これくらいかな。あ、ついでに、このブログの白黒を反転して、文字を少し大きくしました。

→→ だけどまだVPN接続で、勝手なリピートが出るので、他のパラメータをいじってみました。まずFlagsをなんだろうと、誰かがやってたので126にしておいて、DelayBeforeAcceptanceを300にしてみたところ、、レスポンスするまでにdelayが出るようになりました。AutoRepeatDelayとにてますが、これはたぶん、repeatか、それ以外のdelayかの違いなのかな。

ならばと、DelayBeforeAcceptanceとFlagを適当にいじってると、再起動したときにキーボードが効かずログインすらできなくなりました。。。焦りましたがログイン画面の簡単操作のなかにあるソフトキーボードでログインして、設定を、flagを59に戻して、あとDelayBeforeAcceptanceを30と、小さな、ゼロで無い値を入れて見たところ、復活して、通常使用はてきぱき動きます。問題は、VPNですが、どうかな。

→→→良さそうです。 結局、DelayBeforeAcceptanceを30にしたのが正解だったのかな。

 →→→→でもやっぱりだめ。おとなしく、WIndowsのキーボードの設定の、表示までの待ち時間、を最速ではなくて、一つ遅いものに設定したところが、妥協点ですか。キー入力のときにちょっとひっかかるのがいまいちだけど、これはやむなし。

2019年3月16日土曜日

アレルケアの謎

コリン作動性蕁麻疹、今は単に汗アレルギーとかいわれてますが、このためにとくに食事のあとは人に会えないくらいひどいぽつぽつができてました。札幌にいた頃は最悪で、これを抑えるためにアレグラなどの抗アレルギー薬を使いすぎてしまったせいで、アレグラなどの抗ヒスタミン薬自体に対して蕁麻疹がでるようになり、一番ひどかったときには、ぽつぽつが腫れて、顔中が腫れ上がるようになってしまい、途方に暮れてました。研究室にいたら人に会うので、外に出歩いて、誰もいない通りを歩いてました。なによりも心配だったのは気管狭窄。もしも気管が腫れても呼吸だけは確保できるように、ストローだけはいつもバックにしのばせてました。幸い、そんなことにはならなかったですが。私の場合、普通のアレルギーと違って、体の表面だけの反応でした。おそらく汗に対するアレルギーだからかな。

福島に来てからはだいぶよくなったのですが、それでも臨床の学生に、実験室で、こうやるのだよと教えてると、そのピペットマンを持つ手に赤いぽつぽつができてるので、大丈夫ですか、何か検査されたほうがとだいぶ心配されました。先生が倒れたら学位がやばいかもと思われたのでしょうが、あまりよくある症状ではなかったのかもしれません。

そんな頃、なにかの感染症になって抗生物質を長く飲んでたときに、抗生物質で腸内細菌が死滅するからと、ミヤリサン(酪酸菌 宮入菌)と納豆を彼は勧めてくれました。このときもカルピスのアレルケア、L-92は飲んでたのですが。感染症は直ぐに消え、抗生物質はそのときだけでしたが、そのあとも、ミヤリサンと納豆はずっと飲んでました。気がついたら、いつしか、コリン作動性蕁麻疹も消えてました。

同時に、花粉症も気がついたら消えてました。コリン作動性蕁麻疹に比べたら、花粉症はたいしたことないですが、それでも不快には違いありません。それが、春先になって車の表面が黄色くなるくらい花粉が飛んでいてもほぼ平気。福島に来た時分は春先は花粉症とPM2.5で苦しめられて、春はとってもいやでしたが。

アレルケアの液体飲料のは大量に買い込んでいて、311の時、水が貴重になったときは、このストックのアレルケアドリンクを水代わりに飲んでました。そのせいか311の春は花粉症は全く出ませんでした。もっとも、仮にでていたとしても、それどころではなかったわけですが。そのストックもなくなり、花粉症もしばらく出てなかったので、もう要らないかと昨年末からやめてみました。だけど、2月中ぐらいからなんとなく目が痒くなり、むずむずするようになりました。これにつれて、また、手に赤いぽつぽつもでるようになりました。

これはまずいと錠剤のアレルケアを買って飲んでましたが、たいして効果なし。やむなく、ドリンクタイプをまた買って、毎日少量ずつ飲んでたところ、今度はてきめん。積もった花粉を指で掃除できるくらいになりました。

つまり、どうやら、液体のL92乳酸菌が私には有効なようです。 これは前も同じような事を書いたことがあり、かなり再現性高い。それをおそらくミヤリサンは助けるのかな。なぜ液体が良いのでしょう。たぶん、摂取している乳酸菌の量はたいして変わらないか、むしろ液体のほうが少ないくらいのはずです。揮発する有効成分があるとは思えないので、乳酸菌の凍結乾燥のせいではないだろうし。胃の中では個体でも腸に入った頃には溶けて液体タイプと同じになってるはずなので。

それとも、この菌の作用部位が上の方、胃に近い腸の部分、十二指腸か、小腸の入り口あたりにあるのからでしょうか?だけど、普通、腸内免疫の主体とされている免疫の監視装置のバイエル板はもっと後ろの方、回腸で多いはずで、そういうこともなさそうです。ならば、錠剤タイプを溶かし飲んで効果を比較すれば、わかるかもしれないけど、これはやらないかな。謎ですが、ともかく液体タイプのアレルケアは効きます。

2019年3月11日月曜日

小さなパン屋さん

明日は3月11日。NHKで被爆対応に追われた医師らの苦悩の日々の記録が放映されてました。大学のよく知ってる人も出ていて、あまりに率直すぎて、大学的にどうなのかとは思いつつも、あれが正直なところ。医者とはいっても放射線に関する知識は一般人に毛が生えた程度です。放射線を日々取り扱う専門医ですら、診療以外の話になるとちっともあてになりませんでした。

番組では、対応にあたっていたスタッフが一人また一人と壊れて、泣き出していったと災害医学の教授が話してました。全くその通り、思いだしました。そこまで言うかとは思いましたが、あっさり言ってしまうのがいかにも彼らしい。

その当時、大学では、各部局から代表者が出ることになっていた全体者会議が毎日開かれ(たしか直後は朝夕と二回開かれてました)、浜通りで何が起きているか、今日明日にどのような医療が必要かを情報交換し、対応が話し合われてました。でも、最も大事な課題は、まず医者の心が壊れないようにすること。

医者でもこういうときに強い人と苦手な人がいます。これは平時の有能さとはほぼ関係なし。そこでこの会議では、危機になるほどアドレナリンが出る人が仕切ることになりました。毎回、どうしようもないようなギャグを誰かがいう事をノルマとすることで、会議では心の平穏を取り戻すことになりました。

壊れる要素はいろいろありました。これほどの災害で大勢の人が亡くなることは、医者といえども未経験だから仕方ありません。ほかにいろんなプレッシャーがありました。私にとって、おそらく多くの医師にとっても、もっとも辛かったのはガソリンがなかったことでした。水もなかったけど、大学にさえいれば飲み水に困ることはなかったし、トイレは不快だったとはいえ、それで死ぬことはないので。

ガソリンは、街ではほぼ入手できないので、各講座では、たしか40Lまで配給されてましたが、結局、うちでは使いませんでした。ただ、もし原子炉の冷却がうまく行かず大規模な爆発につながった場合、ぎりぎりまでとどまるにしても最後の段階では退避命令が出ることも想定されていました。私らはそれでも残ることにしてましたが、それにしても、ガソリンがあって行動の自由が確保された状態で残ることを選択することと、それがないままで、つまり残るしかないこととは、精神的に大きな違いがあります。

原子炉の中の温度に一喜一憂するなか、気持ちを軽くしてくれたのは、近くの講座の若い人が、残り少ないガソリン使って、温泉行ってきましたよ、と脳天気に話してくれたこと。意外とあの時期、山の上の方の温泉では営業しているところがあったのです。たぶん、この辺が福島の人のやさしさ。きっと、温泉は勝手にでてるわけだし、市内では誰もが水が出ないと困ってんだからと、いうことなんでしょう。

なんだか、それを聞いて、明るくなりました。この時期に温泉かよ、まったく、と口ではいったものの、そういう軽さは救いでした。深刻なだけでは持たないなと思ったものです。

そういえば、あの時期、お店の対応もはっきりと分かれていました。ガソリンスタンドでも、供給が極度に減った状態でも平時と同じ値段をつけてたところが大部分だった中で、値段をつり上げたところもありました。ま、商売の原点ではありますが。

タクシーでも、まったく対応が分かれ、最悪の時期でも、まったく普通に市内を走ってくれた松川観光というタクシー会社には今でも感謝しています。

ものがない、水もないなか、うちにはまだ材料があるのでとそれがつきるまでやるからと、いつもと同じ値段でパンを売ってくれてた小さなパン屋さんもありました。誰も最小限しか買わないので、いくつも買い込んでおきたいのをぐっとこらえて、だけど、たしか、何か言い訳しながら、3つか4つ買ってしまったのは、ちょっと恥ずかしかった。

もちろん、なによりも原発の中に最悪の時期でも捨てずに大勢の作業員が残っていてくれたことが最大の支え。政府には何も期待してなかったけど、普通の人の生きようという強い気持ちを知ったことが、あのときのぎりぎりの我々のメンタルを救ってくれたように思います。

2019年2月13日水曜日

IQ84

「青豆は自分の中にあるいくつかの小部屋を訪れ、魚が川を遡るように時間を遡った。そこには見慣れた光景があり、長く忘れていた匂いがあった。」

ながく読んでいたIQ84が連休の最後の夜についに読了。前に一度読んでましたが、やはり読み方がだめ。何読んでたんだろうと思います。

新たに読みふけっていると、なんだか具合悪くて横になるのも辛かった夜も、なんとかしのげました。私の本、kobo aura oneにはIQ84として3冊分、1500ページを超えるこの大長編の全体がはいってますが、BOOK2を終えて、Book3をさて、と続けて読み出したとき、なんと、この本は読んでなかったことに気がつきました。そういえば、以前はそんなに熱心じゃなかったので、買っただけであとで読もうと思って、そのまんま、書棚に並べてました。単純にうれしかった。まだ読んでいない彼の長編があったなんて。

「彼女の生きた感情はどこかよそにあるらしかった。少なくともこの場所にはない。別のどこかにある鍵のかかった小さな暗い部屋に、その心はしまい込まれてしまったようだった。」

BOOK2の終わり、青豆が高速道路上に一人たち、いぶかしげに眺めるベンツの女性を尻目に、ヘックラー&コッホをくわえて首都高の上で息絶え、かたや、天吾が青豆を探す決意を固める、このシーンは、とても感動的でした。

だけど、BOOK3では、なんと青豆は生きてたんだ、というところからはじまり、まるで手塚治虫の長編のようなクライマックス。決して皮肉ってるわけでなく、これだけ面白く、読むのが楽しみだった小説は、ほんの数えるくらいしかありません。

この壮大で神秘的な物語、 これを知らない人生は寂しい、というのが読み終えたときの率直な感想。村上春樹は、三題噺が得意で、お題をもらえばいくらでも話は出てくるといってましたが、それがよくわかります。この作品は最初BOOK1と2がでて、しばらくしてから3が発行されて驚きと歓声で迎えられました。これにはたぶん経緯があり、BOOK2の時点で、いったんはおわってたのかなと思います。だけど、この物語はもっと続く意志を持っており、彼はそれを書きとめた、というところでしょうか。

人は物語るもの。かつて人間がまだ洞窟の中で暮らしていた頃でも、おとなたちはたき火の前で外の闇に耳をそばだてながら、子どもたちに空の星たちの闘いのお話を聞かせていたに違いありません。

 それにしても、なんて見事な表現、イメージなんだろう。

「・・・まるでそこにかぶっていたほこりが夜の雨に洗い流されるみたいに。
不安と期待とおびえが、がらんとした教室の隅々にまで散らばり、臆病な小動物のように様々な事物の中にこっそり身をひそめていた。数式の消し残しのある黒板、折れて短くなったチョーク、日焼けした安物のカーテン、教壇の花瓶に挿された花、壁にピンでとめられた子どもたちの描いた絵、教壇の背後にかかった世界地図、床のワックスの匂い、揺れるカーテン、窓の外から聞こえてくる歓声ーそこにある情景を天吾はとても克明に頭の中に再現することができた。」